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本当は怖い白雪姫

俺の名はきゃらを
森で猟師をいている
要するに獣を追って暮らしている

この日もいつものように狩をしていた
すると見かけない猟師がいる
それなりに縄張りというものがあるが
それでも仲間の知り合いかもしれない
下手に注意をすることもない

何より腕がよければ
別にライバルがいようが獲物には困らない
だが気にはなる

遠巻きに見ていると
イノシシを一発でしとめる
その腕は惚れるな

格好をつけた言い方をすれば
俺たちは言葉ではない
その腕が言葉なんだよ

腕前を披露されてしまえば
こちらも腕前を見せてやるか
しかし意外な事が起こった
いきなり彼が俺に矢を放ったのだ

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『あだだだだだだぁ~~~』
『てか貴様何をする』

明らかにミスではない
そんな腕では一発でイノシシを
仕留めるなんてできない

すると話しかけてきやがった
「悪く思うな・・死んでくれ」
「せめてひと思いに楽にしてやろう」

まてまてまてまてまてーーーーい!!
納得がいかない。

『俺が何かしたか?』
恨まれるようなことはしていない
そりゃ獣からすれば俺は天敵だ
だけど、人に恨まれる謂れはない

『まさかお前・・猪の神か?』
「いやそれはない。」
即否定だった。

そりゃそうか。俺もあまりの尻の痛さに
気が動転していたのかもしれない

しかし無理か、こちらは手負だ
しかも既に彼の腕は見た。だからわかるんだ

『なぜ一撃でしとめなかった』
『それと最後に聞かせてくれ』
『なぜ俺は狙われたんだ?』

助からない時にあがいても無駄だ
それに散々獲物を狩ってきた
自分だけは狩らないでくれとは
都合のいい話だよな

おかしいな命の消滅を前にすると
生き物は哲学的になるのかな

諦めた態度が良かったのかもしれない
彼は直ぐに次の矢を放とうとはしない

「王妃がな、聞いたんだよ」
王妃?全然予想だにしない答えが返ってきた

『誰に聞いたんだ?』
「鏡だよ」

尻に矢がささり痛さのあまり
変なアドレナリンがでてきのか
こいつは一体何を言っているんだ?

『鏡ってなんだよ』
「そこから話すと遠いな」

だけどそこから話してもらえないと
急なメルヘンで来られても困るよね
こっちは獣とはいえ、自然より命を頂く
世界観だからな。

話を聞くにつれて理解してきた
なんでも王妃は世界で一番美しいものを
写す鏡をもっているらしい
それで鏡に美しいものは?と
尋ねらたらいつも王妃だというのだが
その日、鏡は

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」
「きゃらをです」
と俺の姿を映したらしい。

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