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オオカミが来たけど早い

俺の名はきゃらを
物心がついたときから両親はいなかった
今、田舎の村で羊飼いをしている

将来の展望もないまま
無為に日々を過ごしていて
変らない日常に不意に飽きが来たんだ
どちらかというと自棄な感情がある

それでこの間、オオカミが来るぞー
嘘をついたんだよね。
そうしたら、村の皆が慌てふためいて
本当面白かった。

だからまたやってやったんだ
慌てふためく様を見て
また俺は楽しんだのだけど

今回は流石に2回目だから
悪戯では許されないということで
村の有力者の家に呼ばれた

気持ちが重いよ
なんか言ってきたらどうしようかな
こっちはやさぐれているんだよな
この時代は無い物だけど
心のボンタンを履いているんだよ

整髪料もないからそのままのスポーツ刈りだけど
こころはリーゼントなんだよっ!
剃り込みバリバリなんだよ!
なんならわかめくらい刈り上げっぞこらっ

あんだけ刈り上げたらもうそれは
社会に対する挑戦ですかーこのやろー!

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有力者の家につくと
娘さんが案内してくれた
皆で集まって俺を罵るのだろうさ
やったんよー!感満載だ

そして結構な料理の並ぶ食卓に通され
座るように案内され
有力者のおっさんが優しく微笑みかけてくる

なんか出鼻を挫かれた

「なーきゃらを」
『なんですか?』

だが警戒は怠らない。
油断させる罠かもしれない
「俺はな、この通り娘が一人いるだけだ」
そうなんだ?知らなかった
結構な人数で暮らしているから
大勢の家族がいると思っていた
「俺はこの村を愛していてな」

『はい』

「この村で一番の働き者である
 お前を娘婿にしたいと思っている」

えっ?そうなの?だけど娘さんの気持ちもある
「あらお父様・・恥ずかしい」

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まじでかっ!
満更嫌でもなさそうじゃないか
気立てもわるくないし

俺は女性経験はないぞ
オオカミではなく羊ですぞ~~
めぇ~めぇ~鳴きますぞ~~~い
ちょっと浮かれてしまった。

「だから一所懸命に働き
 もう嘘をつくのをやめなさい」


『はい』

素直に従ってしまった
そもそもボコボコにされる
そんな覚悟だった俺の心はもう
コトコト煮込んだポタージュスープよりも
とろとろでございまするぞ~~~
お父様~~~

やっぱり浮かれていた
そして美味しい食事を頂いた後
俺は二度と嘘を吐くまいと心に決め
そのまま家路に向かった

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