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冬の街、人生の味について

冷たい街

どこまでも冷たい

うんざりするほど

温もりを探している

誰も扉を開けてはくれない

冬の街

ただひとりだけ

こんな孤独の凍え死にそうな時

やさしい声をかけてくれる人がいた

それは意外な人だった

自分だった

他の誰でもない

自分自身が自分にかけてくれる
世の中でいちばん温かくてやさしい声

涙がこぼれた

温もりをくれる誰かを
すがるように探すのを辞めて

家に帰った

パンを食べた

寒かったね
もう大丈夫だ
家に入れば温かいだろ

自分自身に語りかける
自分の声に

泣きながらパンを食べた

ドイツの歴史的な詩人であり
劇作家、小説家、果ては政治家も努めた
ゲーテは言った

涙とともにパンを食べた者でなければ、

人生の本当の味はわからない


おしまい



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