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虚ろに横たわるラブラドールと元野良猫たち

5月末までに、あと4日ほど有給休暇を取得しなければならないんだそう。
で、祝日でもないのに3連休でした。

休みの日は混んでいて足が向かないショッピングモールへ。
お目当ては自分で揚げる串揚げの食べ放題ランチ。と、猫たちの爪とぎ。

長らく品切れだったのが再入荷されたそうで。
いっしょに暮らしていないひとには、こんな段ボールを貼り合わせたものが3,000円するなんて驚かれると思いますが、けっこう爪とぎって高いんです。
この『オーサムストア』のは部屋にあってみすぼらしくないのもいい。

大きなショッピングモールなので、ほかにペットショップもあって。
じゃらしの品揃えって大きいところほど多いので、そちらも見に行きたく。
売られてる仔たちも見ることになるので好きじゃないんですが。
と、先に書いてしまうと見てツラくなるのは毎度のことなんだけれど今回は居た堪れなくなってしまって、用事だけ済ませて早々に退散。

もう、みんな寝てんの。
遊び疲れてだとか、おなかいっぱいでだとか、そういうんじゃなくて。
ほかに出来ることもなくて、そうしてるって感じで。
3か月そこそこくらいの小さな犬も猫も、たぶん「その空間しか知らない」みたいな、たのしそうな雰囲気もなく寝てんの。

陰の気っていうんだろうか。
こんなところに楽しいことなんてないんだよ、って様子で。
正直ちょっと、うちの子のオモチャをこんな陰の気に満ちた空間で買ってもいいんだろうかって躊躇いそうになったくらい。
目を引いたのは、いちばん大きなショーケースにごろんと横になったままでぴくりとも動かない真っ黒なラブラドールの仔でした。
ツヤツヤで、でも、それだけ。
たぶん諦めを仔犬のカタチにしたら、あんな感じ。

最後に鼻を濡らしたの、いつなんだろう。
そんなことを思いました。
当たり前に生まれて、ただ元気に外を走りまわったことすらない仔犬。
そんな悲しい生きものが、ただ横たわって。
目は閉じたまま、身じろぎもせずに。

もう、見るに忍びないの。
正直あれは虐待と何か違うんだろうか、とさえ思えた。
いっそ100歩譲って、もう日本からペットショップはなくならないとしてもショーケースに閉じ込めなきゃいけない理由にはならない。
きちんと走り回れるだけの場所があって、それでこそ本来の姿として誰かに気に入られて、連れ帰ってもらう。
せめて、そうならないもんなんだろうか。

今日も、あの真っ黒なラブラドールは息をして、ただ生きてるだけ。
あんなところに閉じ込められて。
太陽の光も浴びずに、LEDの明るいと暗いを繰り返すだけ。
あれは虐待と何か違うんだろうか。
正直、そう思えた。

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わが家に帰ると、もともと気に入りの寝床にしていたシロ茶のコタは新しい爪とぎでご機嫌な音をさせて、もう古いほうに見向きもしない。
べっ甲のレヴィは新しいオモチャもあると知ってるみたいに、いつ出すのか待っているのと遊びたいのとで足元をぐるぐる回ってバターになりそう。

この子たちが、せめて毎日たのしくあるように。
真っ黒なラブラドールにも、そんな日がきますように。

じゃらしを振りながら、祈るようにそんなことを思いました。

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