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12:愛されない彼女よりも

昨日は彼とデートだった。
日を重ねる毎に、私たち二人の距離は近くなっている。

彼女に遊びの予定をドタキャンされ、かなり怒っていた彼も、もうすっかり落ち着いていた。

彼女とのラインを見せてもらったけど、
"優しい人は怒ると怖い"
が、具現化して文面に現れていたし、
(好きな人にこんな態度を取れるものなのか…)
と思ったりもした。

愚痴LINEが来た時、
「私は今まで付き合ってきた人と喧嘩という喧嘩をしていないから、分からない。」
と言ったら、
「そこまで好きじゃないからじゃない?」
と、辛辣な言葉が返ってきた。
確かにそうかもしれなかった。


彼は彼女の事は大切にしているようだった。
ほかの女と平気で遊びはするけれど、
結婚したら変わると自分で豪語するくらいだから。

遠距離で会えないと他で癒しを求めたくなる気持ちは痛いほどわかる。
5年も遠距離恋愛をしているくらいだから、こんな生活をずっと続けてきたんだろう。
彼女に隠して女と会って、癒されて落として抱いて乗り換える。
こんな男、傍から見たら大嫌いだと思う。



デートを1日過ごして、楽しかった。ずっと楽しかった。
毎日のように連絡を取りあっていると、話題も尽きると思っていたけれど、彼とは、なぜか無言の時間でも楽しかった。

帰り際、彼は名残惜しそうに私の手を握った。
運転席に座る私の肩に頭を乗せて眠そうにしている。
「眠かったらシート倒して寝ていいよ。」
そう言っても聞かずに、話していたいから寝ないと言い張った。


やがて彼の家に着く。
送り届けたのに、全く車から降りる気がなさそうだった。

彼は今日楽しかったことを嬉しそうに話した。
最近のこと、私の愚痴のこと、勉強のこと、将来のことを。


ふと訪れる静寂、

俺らいつまで遊べるんだろうね。

私は夜ご飯の時に話していた、そんな言葉を思い出していた。
彼から出てきたそれは、
"私とは遊びだ"ということと、
"もう少し遊んでいたい"という意味が込められていた。

そんなことを考える事も、もう疲れたな。と思った時、彼が私に向かって手を広げた。

彼は、おいで?と言う。

私は、もうなにも考えずに彼の胸に顔を埋めた。

いつか後悔するとか、彼女がいるのに好きになってしまうんじゃないかとか、そういうことは何も考えずに。

吸い込まれるように彼の胸に抱きつき、肩に手をまわす。
彼は私の頭を撫で、私をぎゅっと締め付ける。

あぁ、愛されてる。私たち、今好き同士なんだ。

なぜかそう思った。
幸せで、思いが溢れていた。
私たちお互い好きとは一言も言っていないけれど、
お互い未練も束縛も嫉妬もないけれど、
初めて好きと知った気がした。
初めて、わたしは好きな人と抱き合った気がした。

愛されない彼女よりも、今、不実に愛されている私でいられたらいい。

そう思って、今日もひとりで夜を過ごしていた。




Ckw.

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