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日本国は、氷河期世代を冷遇したツケとして、これから人口大減少というペナルティを負う【少子化問題の本質】

日本の少子化問題が叫ばれて久しいが、一向に抜本的な解決策は示されず、2022年の出生数は戦後初めて80万人を下回った。

第一次・第二次ベビーブーム時には出生数が200万人を超えていたことを考えれば、日本の退潮は明らかだ。

少子化対策・少子化対策と、政治家は声高に叫ぶけれど、その本質に目を向ける者は、マスコミ含めて少ない。

日本社会がこれから向かえる未曾有の少子化・高齢化社会は、第二次ベビーブーマー(就職氷河期世代)を冷遇した国家に対する罰ゲームなのだと思っている。

少子化は例えるならば、冷遇され続けた氷河期世代の怨念が日本社会を襲う現象

第二次ベビーブーマー(1971~1974年生まれ)及びその少し後の世代は、人口が多い年代であるが故に、受験競争も大変であった。大学を出たあとには空前の不景気が日本を襲っており、まともに就職できた者も少なかった。いわゆる「就職氷河期世代」である。「ロスト・ジェネレーション」とも言われる。

就職氷河期世代が就職期を迎えた1990年代は本当に就職が厳しく、有名大学を出ても一流企業に就職できる保障は全くなかった。有効求人倍率が0.5を下回ることもあった。

更に悪いことに、会社に縛られない新しい生き方として、「フリーター」や「派遣社員」なるライフスタイルが登場した時期でもあった。直前まで日本経済が絶好調であった記憶も新しく、しばらくのあいだ「フリーター」や「派遣社員」として働いていれば、そのうちまた景気も良くなるでしょ、という楽観論もまた事態を悪化させた。

御承知のとおり、その後もほとんど日本経済は良くならず、「フリーター」や「派遣社員」のまま固定化されていく者も多く出た。小泉政権以降、「格差社会」という言葉も定着した。

この世代に対する救済措置はほとんど行われないまま時代は流れ、今やこの年代は50歳前後となった。

人口の多い第二次ベビーブーマー(≒就職氷河期世代)が子どもを増やせなかった時点で、少子化問題における日本の負けはすでに確定しているのである。少子化対策は既に負け戦である。

因果は巡る。これは、日本社会がこの世代を見捨てたことの、報いといえる現象だ。

太古の昔より、日本人は「怨霊」を恐れてきた歴史があるが、少子化問題はいわば就職氷河期世代の怨念が日本を襲う問題と捉えた方が良いのではなかろうか。「少子化対策」を叫ぶ政治家の人々には、まずその点を認識してもらった方が良い。

非業の悲劇に見舞われる次世代の日本を担うはずだった人々

就職氷河期世代の人々は、その人口ボリュームの大きさから、次世代の日本の発展を担うはずの人々だった。

けれども、受験戦争で過当競争に晒され、大学を出ても職を得るのが難しいという悲劇に晒された。そしてその後、更なる悲劇が彼らを襲った。

小泉政権時代、非正規雇用社員に対する規制緩和がなされ、どちらかといえば「非正規雇用を増やす方向」への圧力が働いた。日本企業も以前ほどの体力がなくなってきた時期であったので、この方針は社会に受け入れられた。氷河期世代が30歳少し前くらいの時期である。

これにより、もはや中途でしか正社員になれる可能性のなかった氷河期世代の正社員への道はさらに遠くなった。

そしてリーマン・ショックから民主党政権時代。日経平均株価も7000円代まで低下するなど、日本経済は暗黒の時代を迎えた。氷河期世代の30歳代は、そんな感じだった。「年越し派遣村」などが話題となった時代もあった。

次世代の日本を担うはずだったこの世代の人々の多くは、本当に苦しめられ、社会の中心を担うにいたらず、それによって日本の国力全体が弱体化した。日本は、バトンを引き継ぐべき次世代を育てられなかったのである。

そして、わずかな希望がさしたのが第二次安倍政権時代である。今から思えば、ここが少子化問題を抜本的に解決できる最後のチャンスだった

アベノミクスにより株価は上昇し、好景気とまではいかないとしても、以前ほどの不況感がなくなった。株価は3倍となり、失業率も低下、有効求人倍率も1.4~1.5となり、「人手不足」という言葉がマスコミをにぎわすようになった時期である。

この時期に新卒を迎えた世代は、十分にアベノミクスの恩恵を受けただろう。それ以前の世代についても、社会に復帰できるチャンスが少しはあったはずだ。けれども、辛酸をなめ続けた就職氷河期世代への支援が十分だったかと言われれば、十分ではなかったと思う。これにより、少子化問題における日本の敗戦は確定した。

再チャレンジを果たした安部氏の、再チャレンジへの支援は不十分だった

アベノミクスの時代、就職氷河期世代は30歳代~40歳前後となっていたと思われる。

この時期にこそ、少子化問題を反転させる最後のチャンスがあったはずだ。例えば、結婚したら住宅ローン肩代わりとか、子どもが生まれれば〇〇〇万円(3桁)支給や所得税減免など、徹底した少子化対策を行うべきだった。また、いまだに不安定な立場にある者の就職支援ももっと行うべきだった。

安部晋三さん自身が、一度挫折を経て総理へ返り咲いた「再チャレンジ総理」であったため、「再チャレンジ」をもっと積極的に支援するべきだったと思う

もちろん、何もやっていないわけではないことは承知している。

安倍晋三首相が第1次政権時代に掲げた再チャレンジ政策の強化に乗り出す。若者に加え、就職氷河期世代とされる30代半ばから40代半ばへの支援に力を入れる。今後3年間を集中対策の期間と定めて施策を打ち出す。6月にまとめる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)にも盛り込む。

2019年5月24日日経新聞記事

けれども、圧倒的に不十分だった。

この記事にみるように安部氏自身が就職氷河期世代の救済が重要だと認識していたにも関わらず、結果としてほとんど何も変わっていない現実に悲しさがこみ上げる

インフレによる賃上げの流れも蚊帳の外

2023年現在、世界的なインフレを反映して、日本の低賃金化・貧困化が叫ばれ、急に「賃上げ」を言い始めた日本企業である。

初任給も突然アップし、昨今の就職活動市場は圧倒的な売り手市場である。

だとすれば、今までの賃金留保や雇止めは一体何だったのだろうか?というのが、就職氷河期世代の偽らざる本音だろう。

このインフレ狂騒曲も、就職氷河期世代は蚊帳の外である。就職氷河期世代を救済しなければならないと安部さんは言ったにもかかわらず、就職氷河期世代を差し置いて日本社会は回り続けるのである

岸田政権は「新しい資本主義」や「異次元の少子化対策」をうたっているが、就職氷河期世代の救済については、もはや忘れされてている。

日本は苦しい時代を迎えるが、やがて夜明けは来る

ということで、人口ボリュームが最も多い世代が家庭や子どもを持つ余裕が持てないままに時は進み、2030年代にはこの世代が高齢化してゆく時代となる。少子化は改善せず、膨らむ社会保障費を少数の若者が支えるという時代が続くだろう。

2030~40年代、日本にとって苦しい時代が続く。かつてGDP世界2位の経済大国を誇った日本は、人口ボーナスを失うどころか、人口ペナルティをくらって、おそらくGDP世界6~7位あたりの老いた大国となっていると予想する。

だが、結局のところ、これは日本国自身が望んだことなのだ。第二次ベビーブーマー(≒就職氷河期世代)を見捨てたツケである、という認識を、日本社会はもった方が良い。

少子化対策はもはや負け戦、これからの少子化対策は、「いかに負けを少なくできるか?」という撤退戦に過ぎない。

けれども、長い目で見れば私は日本の将来に悲観はしていない。就職氷河期世代の怨念が消え去る数十年後、人口ピラミッドは正常化し、社会保障費も激減する時代がいずれやってくる。日本の長い歴史を考えれば、そのときに向けた備えをしておく、ということが重要だと考えている。

日本は必ず、復活のチャンスを迎える。

ツケを払ったあとの日本の復活のために

人口ピラミッドが正常化し、日本が再び成長軌道に戻りうる2050~60年代頃へ向けて、日本国はどのような長期戦略を練っておくべきだろうか?

恐らく今後、「移民を入れて人口を維持しましょう!」という議論が活発化してくると思う。その是非に関する考察は別記事に譲るとして、移民を入れなくても「いずれ日本は再び復活軌道に乗るだろう」という大筋を理解しておくことはとても重要だと思う。

日本の長い歴史を振り返っても、1億人も人口がいない期間の方が長かったわけで、狭い国土を考えれば、人口8000万人くらいが適正ではないかとドーンと構えていた方が良い。

就職氷河期世代の問題を無視して、人口維持のために移民推進に議論をすり替えるのは欺瞞だと思う。

将来、日本が再び成長軌道に乗ったときのために備えるべきは、移民を入れて見かけ上の人口を維持することではなく、日本人が自身のルーツと国の成り立ちを正しく理解しておくことではないだろうか、と思っている。

日本というものの”コア”があれば、日本は必ず復活する。安易に移民を入れて、日本の”コア”が失われることの方が、長期的に日本は低迷することとなるだろう。別に私は国粋主義者ではないし、移民も何がなんでも反対というわけではないが、日本の歴史というものを深く理解するほどに、日本という国の特殊性が力をもたらしていると感じるので、ここに記しておきたい。

就職氷河期世代は苦しんだが、日本という国は続いていく。日本の長い歴史の中には、もっと苦しい時代もあった。そういったことをこそ、日本人は学んでおくべきだろう。

そんな思いも少しもって、ほとんど何の影響力もないがnote記事に書きとどめている。


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