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【GDP逆転!】ドイツの今後の見通しは?:ポテンシャル高いが苦しみもあるランドパワー大国

ドイツ・・・日本と同じく敗戦国でありながら、その工業力・技術力で瞬く間に世界屈指の大国に返り咲いたという、日本と共通点のある国。

現在は、実質的にEUの盟主となっている。最近では、GDP3位・4位の日本とドイツの順位が入れ替わったという報道も、記憶に新しい。

インダストリー4.0」といった概念を提唱し、「俺たちは技術でメシを食っていくんだ!」という覚悟を感じる・・・その爪のあか、日本にも飲ませたいと思っていたが・・・

実態は、そうウハウハでもないようだ・・・という話を、「ドイツの見通し」としてまとめてみたい。

この記事を見れば、世界の中におけるドイツの大まかな立ち位置と、日本が求めるべきドイツとの関係性に関する知識が深まります。

ドイツ躍進と低迷の原因

かつての敗戦国・ドイツが成長してきたのは、日本とも共通するもともとの工業力の高さと、国民の勤勉さに大きな要因があることに疑いようはないけれど、それ以外にも3つ、大きな要因があったと思う。

①移民政策による低賃金労働力の確保
②中国との蜜月関係(VW中国市場で爆売れ等)
③ロシアから安価なエネルギー購入

これらは、成長の原動力になったが、今や足を引っ張る材料となっていることが興味深い。

米中新冷戦(最近では米中の競争と呼ぶ)の枠組みのなかで、中国との関係を見直しせざるを得なくなってきていることと、ウクライナ戦争によってロシアからの安価なエネルギー供給が途絶えたことにより、②③の成長要因は今や重しとなって乗りかかっている。

これらの不満は、①の移民政策にも向き、いわゆる「極右政党」の台頭を招いているという現状である(個人的にはそれほど極右とも思わないが・・・)。

だから、未だにドイツのポテンシャルは侮れないものの、現在の中露依存、そして原発をすべて捨ててしまったという経済構造からのパラダイムシフトが進むまでは、苦しみが続くだろう。

GDPが抜かれたとしても、日独の明暗がそこまで分かれているわけではないのが現状である。

ランドパワーとしてのドイツ

ロシアのウクライナ侵攻以来、「地政学」というものが随分流行するようになったが、世界を海洋国家(シーパワー)と大陸国家(ランドパワー)に分けて考えるということは、世界情勢をみるうえでとても大きなコンパスになる

ドイツは、ランドパワーの国である。そしてEUは、ランドパワーとしての欧州の完成形だと思う。100年前からランドパワーの大国であったドイツが、その盟主に返り咲くのは地政学的な必然だと思っている。

この点から、ドイツの「EU離脱」はあまりお勧めではない、と個人的に思う。イギリスはシーパワー国家なので、EUを離脱し、インド太平洋地域に回帰するということも、本来あるべき姿に戻ろうというものだと解釈できるが、ドイツはやはり大陸国家としてやっていくべきだろう。

ドイツが目指すべきは、ランドパワーの大国として西ヨーロッパに君臨し、自由民主主義陣営の西の牙城となることである。

日本とドイツの関係性

さて、そんなドイツと日本はどのような関係性を目指すべきだろうか。

ドイツは、日本人が思っているほど親日的ではないイメージがあるが、私を含め日本人はわりとドイツ人に親和性を感じているw

19世紀末に「遅れて目覚めた工業大国」であり、その後ともに敗戦国となったあと、世界屈指の工業国に這い上がり君臨し続けている。派手でなく実直で堅実的な国民性も合う

だからこそ、協力できる部分と、競合する部分がある、という問題がある。

分かりやすい例が自動車産業である。ともに自動車産業は強いが、国家の主幹産業であるゆえに競合もする。

地政学的には、日本はシーパワーであり、ドイツはランドパワーだ。

シーパワー国家の使命は、あくまで一般論であるが、シーパワー国家同士で連携しつつ、膨張するランドパワーと対峙して抑え込むというものである。

そういう点から、日本にとってドイツは、重要な国であることには間違いないものの、役割が異なるところもあり、究極的に重要な国というわけでもない。

日本においては、同じくシーパワー国家であるアメリカ、イギリスとの連携が最も重要であり、それに続く枠組みとしてQUAD諸国がある。EUの重要性は、その次ぐらいとなる。EUの重し石として、ドイツとの友好関係を維持することは重要であるものの、「それぐらいの距離感」で、「協力できる部分を探りながら」の関係性が良いのではと思っている。

まとめ

以上、本日は「ドイツ経済は見た目より厳しい」「極右政党が支持を伸ばしEU離脱論も出てきている」というニュース記事に基づき、ドイツの見通しについてまとめた。

ドイツと日本は共通点が多いが、競合する部分もある。また地政学的にはランドパワーであるドイツと、シーパワーである日本が果たすべき役割は異なる。

これらを理解したうえで、「程よい距離感で、協力関係を保っていく」というのが最良だと分析する。(「インダストリー4.0」等、工業国として日本が見習うべき点も多い)

さらに、EUの安定性は日本の国益にもかなうことから、イギリスのEU離脱は必然であると思う一方、ドイツはEUにとどまるべきだと思う。

以上、国際情勢を見通すうえでの一助となれば幸いです。


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