新人がすぐ辞めちゃうのはなぜ?
ダニエル・コイル『最強チームをつくる方法』を読んでいます。
インドにあるウィプロというコールセンターについての話がでてきました。
ウィプロは給料もよく、設備も最先端で、社員への待遇も手厚い会社。
にも関わらず、高い離職率(毎年50〜70%)に悩まされていました。
経営陣は当初、給料を増やしたり、福利厚生を充実させたりすることでこの問題を解決しようとしましたが、離職率は一向に下がりません。
困ったウィプロは、研究者の力を借りて、ある実験を行いました。
数百人の新入社員を2つのグループに分け、それぞれに別々の研修を受けさせる、というものです。
この結果が驚くべきものです。
グループ2の研修を受けた社員は、グループ1に比べ、会社に残る確率が250%も高かったのです。
たった1時間の研修の違いが、離職率を大きく変えたのです。
2つのグループが受けた研修は、以下の通りです。
【グループ1】
ウィプロのアイデンティティについて学ぶ研修。
・優秀なスター社員に会う
・会社の成功についての話を聞く
・ウィプロの第一印象について語る
・社名が入ったパーカーが参加者全員に配られる
【グループ2】
参加する社員それぞれのアイデンティティを考える研修。
・「どんな仕事に一番やりがいを感じるか?」
・「あなたはどんな時に一番幸せを感じるか?」
・「海で溺れた時、自分のどんなスキルを使えば助かるか?」
・社名+自分の名前が入ったパーカーが配られる
グループ1の研修では、会社と個人の距離は縮まりませんでした。
ウィプロという会社や、そこで働くスターたちについての情報をたくさん受け取り、おまけに社名入りのパーカーももらえましたが、両者の距離が縮まるような要素はありません。
一方グループ2の研修は、社員それぞれを個人として尊重し、ともにつくる会社の未来を想像させました。研修を通して、帰属意識に訴えるメッセージを発したのです
グループ2のメンバーは、「ここは安全な場所だ」と安心することができ、会社、一緒に働く同僚たちに深い精神的な繋がりを持つことができました。
はじめての環境では、「自分が安全でいられるか」「自分が自分らしくいられるか」という不安がつきまといます。
そんな”不安”を抱えた人たちに対して、
①とにかく会社の仕組みや仕事を覚えろ
というだけの新人研修を行うのか、
②あなたを受け入れます、ここは安全な場所です
というメッセージを発するのかで、会社への帰属意識は大きく左右されるようです。
②は、一見ムダに見えるものですが、長期的に見ると効果は絶大です。
人間が集団の一員であることに満足することは、非常にポジティブな効果を生み出します。
あなたの会社はどちらでした?
離職率をさげ、会社への帰属意識を高めるためには、会社についてたくさん知ってもらうよりも、社員1人1人に目を向けて、受け入れる時間をとった方が効果的みたいですね。