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『君の声』

抽斗ひきだしが開く音がした
片隅に置かれたイヤフォンと
開きっぱなしの小説が
君の最後をけむに巻いていた

雨宿りを続けていたのに
悲しみにれた手のひらと
掛かりっぱなしのTシャツは
いつか見たらしわになっていた

気づかない間に忘れてるなんて
あの日読んだ物語の読後感みたいだ

流れるラジオに夢を唄った
形のないいくばくかの不安に
その身が打ちひしがれる前に
君の声を聞けばよかった

カーテンは開く気配だけ
知らぬ存ぜぬでたたずんで
ふたをするだけの解釈は
君の姿を希薄きはくに変えていた

傷つかないように笑ってたなんて
僕が知らなかった日の後日談みたいだ

流れるラジオに夢をうたった
中身の無い喝采かっさいに目がくらんだ
その身が朽ち果ててしまう前に
君の声を聞けばよかった

朝をさえぎる部屋にひとり
君の好きな音楽を聴く
当たりさわりのない今日が
ここにあったと不意に思い出した

抽斗ひきだしが閉まる音がした

君の声だった

自分は歌詞を見るのが好きで
よく歌詞カードを見ながら音楽を聴く。

そして、自分で書くのも好き。
ただ、音楽を作れるほどでは無いので、歌詞だけ。

そう言えば「note創作大賞」みたいな募集があったなぁと思い、作ったまま放ったらかしになってたものを書き起こしてきた。

いつか音楽にできるまでは、ここに置いておくことにする。

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