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僕たちはいつも最寄り駅までの距離を見誤る

人は多くの事柄を過信する。

食事、仕事、運動などなど「これぐらいは大丈夫だろう」と思っていることは、自分の能力を大袈裟に見積もっているからであって、大抵、後で痛い目を見るのだ。

実際、目に見えない物を測定することは非常に難しいし、その時々のコンディションや状況によって変化する環境もあるので、仕方ないことだとも言える。

そんな風に人々は多くの事柄を過信するが、その中でも特にいつまで経っても過信してしまうのが、最寄り駅までの距離だと自分は思っている。

毎日のように歩いている道。
何の変哲もない道。
時間通りに出発すれば、余裕で着くだろう道。

基本的には問題なく辿り着けるであろう道なのに、自分はいつもその道中のどこかで走っているし、踏切の音に戦々恐々とする毎日を送っている。

なぜ、そんなことが起こるのだろうか。

まず、一つが信号のタイミング。

この信号という存在こそ、いつものルーティンを掻き乱す特異点であることは間違いない。

順当に歩ければきっと電車に乗り遅れないような道だとしても、毎回のように信号にひっかかていたならば、途端にその旅路には黄信号が灯る。

その際、重要なのは、信号が変わるタイミングに合わせて歩く速度を調節することだ。信号が赤だったならばゆっくりと歩くし、反対側の歩行者信号が点滅し始めたのであれば、少し歩む速度を早める。

もし、ここで運悪く信号に捕まってしまうと
これまでの計算が音を立てて崩れていく。要注意だ。

もちろん、そんなものは最初から余裕を持って計算に入れておけば良いのだけれど、そんなことができるのであればそもそもこんなに苦労もしていない訳なので、一旦、割愛する。

そして、最も警戒するべき事柄が
一度、間に合ったことがあるという慢心に他ならない。

大体、最寄り駅までのルートには
チェックポイントのようなものがある。

自分は「家を出て5分後には、この大通りを渡らないといけない」「途中のセブンイレブンには、電車が到着する4分前に通過する」

と言った、さながらタイムアタックのように細かくチェックポイントを定めているのだけれど、大抵、ベストスコアが更新されると、その時間を基準にして出発時間を逆算してしまう。

すると、どうだろう。

想定される時間はどんどん短くなっていき、途中で無理をすることに慣れてしまい、結果として、電車の時刻表とギリギリの攻防を繰り広げてしまうことになる。

つまり、毎日、自分でハードルを上げ続けているのだ。

横に鬼コーチがいる訳でもないのに、ただただストイックにベストスコアの更新を目指している。そんなストイックさなど捨てる前にリサイクルして、週末の筋トレとかに回してあげて欲しい。

これらの要素を踏まえた上で、最寄り駅までの距離を見誤らないためにはどうすればいいのかと言うと、もちろん、心と体と時間に余裕を持って家を出発すればいいだけの話だ。

そして、それが一番難しいのは
自分でよく分かっている。

明日もきっと、スタートラインの時点で焦っている。ただ、どれだけフライングしたとしても、間に合ってみせるから。


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