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『ロビンソン』One Minute Literature 第九号

  こんばんは。ウサギノヴィッチです。
  今回もあなたの貴重な一分をいただきます。

  今回も掌編の小説を書いてみました。
  よかったら読んでみてください。
  それではどうぞ。

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 春から夏になるのが悲しい。いや、季節が変わるのが、ぼくは悲しい。今の季節だったら、みんな開放的な季節になったりするのに、どこかに行こうとか計画立てたりするのに、ぼくはそれをしている姿を見ているのがなぜか悲しい。理由はない。
 —─あたしというものがいながら、あなたは特別なにもしてくれないのね。
 自転車を転がしながら歩くぼくの前を歩く彼女はそう言った。思い出のレコードと、大げさなエピソードを疲れた肩にしかめ面辛そうに。
 ──ユミって。
 トラックが通った。
 ──なに言っているの。バッカじゃない。
 いつもと同じ時間、同じ場所で言うと必ず効果を発揮する言葉。魔法の呪文。
 アパートの部屋にはバラがテーブルに二輪あった。
 二人は荷物を降ろして抱き合った。すべてのことを忘れて抱き合った。良いことも悪いこともそこでリセットされるくらいに。
 ことが終わったら、しばらく二人は無言だった。
 ──夕飯の支度をしないといけない、とどちらかが言いだして、あわてて服を着て商店街に行く。商店街に行く途中に猫が捨てられていた。かわいいと彼女は言った。いつもの交差点で見上げた丸い窓は、ギリギリ三日月に見えた。
 買い物をチャチャとすませて。夕飯も適当に済ませた。その後は、二人でテレビを見て、風呂に入った。
 ──なんか眠くなってきちゃった。
 ぼくは大したこともしていないのに、彼女にそう告げた。
 ──寝れば、いいじゃない。私もう少しテレビ見てるから。
 ぼくは寝室に行った。そして、寝転んだ。夢うつつのなか、彼女が来るのを待っていた。どれくらい朦朧としていただろうか。いや、眠っていたのかもしれない。
 ドアが開く音がして、光が差し込んでくる。彼女が入ってきて、ぼくの隣り寝転んだ。ぼくは彼女を抱きしめた。
 ──まだ、起きてたの。
 ──寂しかった。君はかわいい。
 ──ありがとう。
 ──なにがあっても君は守る。
 ──ありがとう。
 ──だから、傍にいて。
 ──わかった。
 ──ぼくたちは、どんな嵐が吹こうとも一緒に居ようね。
 ──二人だけの世界は完璧でいよういようね。
 ぼくは返事を酢ことなく、眠気が襲ってきてそのまま眠ってしまった。

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