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結局、ミステリーの感想はあらすじを追うことになってしまう。

 今回はミステリー作品連城三紀彦の『戻り川心中』について書きます。

 ネタバレがありますので、ネタバレしたくない人はこのままブラウザバックでお願いします。

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 どうも、ウサギノヴィッチです。
 今回は、冒頭に申し上げました通り、ミステリー作品でございます。
 このUSA・MAPでは初めてではないでしょうか。
 正直に言いますと、ミステリーをレビューするということに抵抗はあるんですよね。結局、ぼくの中での争点になるのがトリックが良かった悪かったということになりそうなんですよね。

 ところが!

 今回の作品、『戻り川心中』についてはそんなにトリック重視はではありません。
 ぼくも読んでいてトリックを期待していたのでが、そうでなく、純文学のような動機に重点が置かれたお話になってました。

 あらすじは、文庫版の背表紙から引用します。
「大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に追いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。岳葉が真に愛したのは? 女たちを死なせて求めたのはものとは? 歌に秘められ男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。」

 まぁ、ここまであらすじで書かれますとネタバレ書いてあるんですけどね。
 作品の中心となる、岳葉という男は、作中の最初にはどうしようもない人間で、まるで太宰治のように書かれています。女たらしで、酒飲みと。
 物語は、岳葉のいた時代が回想や作中劇のように描写されています。
 要するに倒叙的に書かれています。
「倒叙的に書かれている」というと、少し心中のシーンになにかしらのトリックがあるかもしれないと思うかもしれないですが、心中のシーンは心中のシーンある種の読み応えのあるものになっています。
 一回目の心中のシーンはないのですが、二回目は克明書かれています。この世からいなくなる二人の儚い最後の会話が緊張感を誘います。
 
 現代のパートではなぜ岳葉は心中で生き残ったのかということが検証されます。
 心中をやること誰かに知らせていることが、短歌によって記録されてます。それは、「文(ふみ)」というキーワードから推測されます。そして、心中するまで、岳葉は腹を下す薬を飲んでいたことを彼が泊まっていた宿の係の証言から分かりました。心中をするときに二人は薬を飲んでから、川に入ったのですが、腹を下すことによって薬の効き目を弱くしたんです。そして、二回とも心中した川が、俗にいう「戻り川」という川だったということ。これは、偶然ではなく、岳葉の計画だったのかもしれないことに気づきます。
 そして、最後に辿りついたのは、この心中は、ある女への当て付けの心中だったということです。
 その当て付けの相手が、師匠の奥さんだったのです。
 岳葉が本当に愛していたのは、心中した二人ではなく、師匠の奥さんでそのことを手紙で知らせていのでした。結局、その彼女は罪の重さに耐えかねて仏門に入り、尼になってしまいました。
 これは一種の計画的な犯行であり、人に背負わせるには非常に重いものであることをやってのけたのです。
 人を愛することがすごくねじ曲がり、結局は素直にならなかった。いや、なれなかったのかもしれないし、なぜ、そこで人の奥さん、師匠の奥さんでもいいから奪い取らなかったのかがわからないという動機がぼくの中では残っている。
 でも、これはある意味完全犯罪なのではないだろうか。

追記
ここまででは、不十分なところが実はあります。
真相は、本作を読んで皆さんで読んで感じてください。

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