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#3_8 タイトル未定から逆輸入ブランドを考える

今楽曲派の間で話題のアイドルをご存じだろうか?
それは北海道発のアイドルである、タイトル未定である。

北海道のアイドル?と思うことも多い。
というのも、今までの北海道のアイドルの多くは下記になっていた。
・北海道エリアを中心に作ろうとした(フルーティー・カントリー娘など)
・大型グループの北海道支社(ArcJewel北海道など)
※ここではマーケティング戦略上の立ち位置で分類しており、「北海道1の…」のようなコンセプトとは別に挙げております。

しかし、ここまで本気で東京を前提としたマーケティング施策・コンセプト設計をしたグループはなかなか見ないと思われる。

今回は北海道に拠点を置きつつ東京進出を狙うタイトル未定から、「(成長)ストーリーの密度」「肩書としての有用性」の2点を語っていく。

松井広大さん(タイトル未定プロデューサー)のツイート

こちらのツイートを下記に全文記載します。

コロナ禍前から女性アイドルで称えられているワンマン1000人、2000人の壁を政治以外で解決する方法は圧倒的な地方展開だと思っていて、SNSの発達のおかげでタイトル未定は東京は今回の遠征で第二のホームタウンになりました。ありがとう。
なんでアイドルが勢いある所も伸び悩むって「ライブ」と「特典会」セットで主に成り立ってるからであって、ある程度人気になると数時間で特典会を回すことができなくなって参加できないor参加できても満足度が落ちるがほとんど。ライブだけで勝負しても話せる事に重きを置く人も多いから動員は落ちる。
しかも特典会は大事な事務所の収入源。東京だと毎日のように対バンが乱立。何年経っても同じような毎日の繰り返しでメンバーのモチベも下がって解散。がベター。その解決策が地方展開。ウェブでのプロモーションを疎かにせず(ここはマスト)地方でスタートしてゴールまでのストーリーを壮大に作る。
例えば東京だったらワンマン100人→次は300人!みたいなとこを本拠地地方ワンマン100人!成功したら→東京ワンマン100人!みたいな。その間のストーリーの密度が上がればできるチャレンジも増えていく。必然的に人目に触れる機会がアイドルファン以外にも増えてポピュラーな存在になれる可能性が上がる
少し語ってしまいましたが北海道から遠征してくれた方、東京で待ってくれていた方の熱量をみて、僕のやりたい事の片鱗がみせれた気がしてます。もちろんタイトルの音楽を最大源表現してくれるメンバーあっての話です。

全部読んでくれたら嬉しいです😆
※2020/10/5 原文ママ

(成長)ストーリーの密度

#1_1で食前舌語はアイドルの定義を以下とした。
歌、ダンスなどを総合して、女性の人間性そのものを売り出し、そして応援される存在である

この際、様々応援される対象は様々であるが、やはり女性アイドルといえば「成長」を切っても切り離せない
これは秋元康がAKB48で発言した「AKB=甲子園」と近いものがあり、不完全な存在が成長することを”応援”する、ということである。

ここで、今の地下アイドルで問題なのが、成長タイミングが少ない、ということである。
疑問に思われる方もいるかもしれないが、成長タイミングとは非連続的である(=ジャンプアップする)ことによるわかりやすさが重要であり、成長タイミングを可視化できるものとしては
・ワンマンライブの開催(箱の規模)
・メジャーデビュー
・大型アイドルフェスへの出演
である。

ただ、後ろ2つが1度きりであったり、またメジャーデビューの敷居が下がってきていること(自主出版の形式をとれたり、売上保障があったりしています)、さらには大型アイドルフェスの出演も実力より関係値次第で何とかなったり、正直「当然」になり始めているきらいがある。

その一方で、やはりワンマンライブのキャパ・箱は大きな成長指標であるが、残念なことに規模感にも限度がある。
おそらくファンからすると700人と800人に大きな差はなく、今回食前舌語が形式的に付けたものであるが、一部大規模型を除き、この規模間の移動がないと成長に見えずらい。
そのため、小規模より小さいものも含めると、4回(大規模間で+α)しか存在していないのである。

小規模型
渋谷DIVE(400人)・白金高輪SELENE b2(700人)・渋谷WWW X(800人)・新宿BLAZE(800人)
中規模型
リキッドルーム恵比寿(1000人)・渋谷duo(1000人)・渋谷O-EAST(1300人)・EX THEATER ROPPONGI(1700人)・LINE CUBE SHIBUYA※旧渋谷公会堂(2000人)・中野サンプラザ(2200人)
大規模型
新木場STUDIO COAST(2400人)・ZEPP ダイバーシティ(2400人)・ZEPP TOKYO(2700人)・TokyoDomeCityHall(3000人)・日比谷野外音楽堂(3000人)
最大規模型
日本武道館(15000人)・東京ドーム(55000人)
出典:https://www.livebu.com/search?p=1&pref=13

しかし、タイトル未定は北海道としてのアイドルとして存在することで、同様の体験を北海道・東京での2か所(かつ遠征先ということで東京は少し難しい)で実現し、この成長タイミングを2倍にしたのである。

成長階段

この成長階段を2つにすることで成長タイミングを潜在的に増やし、コンテンツとしての成長頻度を増やすことで話題性を持たせるということである。

肩書としての有用性

#3_1でも述べているが、アイドル業界は自社と他社の違いが分かりにくい最たる事例だと思われる。

ここにおいて、「○○でNo.1」というのは非常に大きな差別化ポイントにもなる。

肩書というのはブランドの一種であるが、このブランドの機能は主に4つに分類される。
 識別機能   ⇒ 差別化
 出所表示機能 ⇒ 販売者の明示
 品質保証機能 ⇒ ブランドによる良質な品質の保証
 意味づけ機能 ⇒ ステータス
ここにおいて、○○でNo.1という肩書は識別機能にあたり、数多いるアイドル業界においてほかのグループとの差別化になるだけでなく、品質保証としても機能している。

今回松井プロデューサーが同様のことを考えていたかは不明であるが、現在の北海道アイドルにおいて上位、もはや一番勢いがあるといっても過言ではない肩書は、東京のアイドルシーンに強烈な印象をもたらす。

北海道

実は同じ戦略でをとったのが煌めきアンフォレントである。
このグループは名古屋を中心として勢いをつけ、その勢いそのままに東京の認知度を高めていったが、これにはもともと「東京では埋もれてしまうが、名古屋で1番になればその肩書で埋もれない」ということが考えにあったと聞く。

タイトル未定のウェブプロモーション

ツイート内にも記載されているウェブプロモーションにも下記のようなものが見られた。

①積極的なYouTube展開
コロナ禍で増加しているが、MVだけでなくライブ映像を格納するなど、ライブ参加への障壁を下げる投稿が多い。
②サブスク
もはやこれも現在の音楽シーンで不可欠であるが、もちろんこちらも展開されている。
③撮影会とSNS掲載
ライブ撮影とは別に、北海道での撮影会が実施されている。
またSNSでの掲出も可能となっている。
④プロモーション戦略
GoTo北海道企画など独自の割引施策や白い恋人の配布など、SNSでの話題づくりも精力的である。

これらにおいて「北海道に行けば特別な体験ができる」だけでなく、カスタマージャーニーのひとつ手前で「北海道に行けば体験できることを東京で理解できる」ことは非常に重要なポイントだと考えられる。
やはり北海道に行くというのはかなりの障壁になることでもある。しかし、その体験価値を伝えることができれば、北海道遠征も検討される。
そのため、その体験価値をどのように伝えるか、がSNSやウェブを通じて感じられることはファン増加になくてはならない同線であると考えられる。

逆輸入の事例

このような事例をマーケティング的には「逆輸入」といえる。

アイドルの逆輸入で一番有名なのはBABYMETALである。

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もともと武道館成功などの実績を持っていたものの、やはり海外での実績がBABYMETALのブランドに箔をつけたことは言うまでもない。
レディーガガのオープニングアクト、BillBoardアルバムチャートで13位、圧倒的な成績のもとに(まぁもともと断っていた説が有力だが)紅白出演など、メタルというあまり大衆受けしない分野においてその知名度を確固たるものにした。

またファッションでも逆輸入がある。それはG-SHOCKである。

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G-SHOCKとはカシオ計算機が出している腕時計であるが、これももともとはアメリカでの流行を逆輸入したものである。
初代G-SHOCKは1983年に発売されたが、1984年にアメリカで流れたアイスホッケーでシュートするCMが過大広告ではないかと話題になり、本当に耐えると分かるとその耐久性からアウトドア愛好家に人気を博した。
そして日本では90年代のストリート系ファッションの人気に伴い逆輸入という形で人気を博した。

これらどちらも、海外に展開するまでに日本のコアファンからの熱狂的な人気を獲得していたのは確かである。
ただ一方で、世間に膾炙されることになるのは「海外で人気」というブランド・箔が後押しとなったといえる。
今回のタイトル未定に関しても、「北海道で人気」という旗印のもと、東京のアイドル業界を席巻する日は遠くないのかもしれない。

閑話休題

別にアイドルとかどうでもいいから北海道行きたい。

2021.10.27加筆

まさかご本人にご紹介いただけるとは…
ありがとうございます!

2021.10.27更に加筆

また、別のファンからこのようなツイートがあった。

東京で人気出てその影響で北海道で人気出るのが逆輸入な気がする🤔

これはなるほどな、と思わされた。
本文では北海道で市民権→東京に殴り込み、の流れであるが、これは最初の段階だけであり、途中からは東京で人気→北海道でさらにファンを増やす、ということである。
ただ、基本的なアイドルの主戦場が東京であることを考えると、東京の見え方的には「北海道から逆輸入」であり、立ち位置によってはどちらも逆輸入になりうるのであろうと考える。

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