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学生が大学図書館に入れない!無料宅配サービス実現までの舞台裏

神奈川大学図書館では、学生への修学支援の一環として、無料で図書を貸し出し・配送する「学生向け図書館利用サービス」を実施しています。サービス開始の経緯とそこにかける思いを図書館職員が語ります。

2020年4月7日、緊急事態宣言が発令されるとともに、学生の安全と安心を第一に、8月1日までの大学への入構禁止が決定された。

①大学の門閉鎖

4月からの新学期に向けて準備をし、心待ちにしていたみんなに衝撃が走った。誰よりも学生が不安や心配を抱いたことと思う。

入構ができなくなれば、学内にある図書館も利用できないわけで、神奈川大学図書館も休館することとなった。

そこから、大学内、職場としての図書館内に不思議な時間が流れた。いつもなら、にぎやかになる(注意して回る)はずの館内に誰もいないのだ。図書や雑誌は変わらず本棚にある、机やイスもいつでも使える状態。

でも、使う人がいない。

そこからは、あたり前にあったものの存在意義に思いめぐらし、自問自答する日々が始まった。使う人のいない図書って…。使う人のいない図書館って…。学生のいない大学って…。

そんなとき、図書館学生スタッフの学生からメールが入った。

「卒論のための資料を借りたり閲覧したりしたい場合どうすればいいのか」「周りの友達のツイートでも、図書館利用を気にしている」「借りている本は部屋に置いてきた。今は実家に。どうすればよいか」…。

SOSに”応えられる”のは自分たちしかいない。

そこから、図書館職員みんなでの検討がはじまった。

「学生の心配や不安を1つでも解消したい」「自宅への図書の配送やれないか」「図書だけでいいのか」「やったら依頼は殺到するだろうか」「費用負担は、学生負担か大学負担か」「出勤も控える必要があるのに本末転倒か」…。

これまでに経験のないサービス。いつもの運用との乖離(かいり)から躊躇(ちゅうちょ)する部分もあったが、待っている学生の顔が浮かび、背中を押した。六角橋商店街の各店舗が積極的にテイクアウトをしている姿も刺激になった。経営層の英断もあり、何とか無料での貸出配送サービスにこぎつけた。

②配送準備の様子

③手を振っている

サービスを開始して2週間。合計約1,200冊、320件の配送の申し込みがあり、何とか配送を終えた。

開始当初は、急ごしらえの案内の情報不足などにより、申込方法に関する質問が多数寄せられ、一日中、その対応に追われた。それと同時に、それだけ強い要望のあるサービスだと再認識した。学生から、無事届いたことへの感謝を伝えるうれしい連絡もちらほら届きだした。

これから先、まだどうなるか、どう変わっていくかわからない。学生の要望や周囲の環境の変化に合わせて、さらに変えていかなければならないと思うが、まずは配送業者の方はもちろん、システムや受付、梱包に至るまで、感染リスクに備えながら運用を支えていただいている多くの方々に感謝したい。

図書館で“にぎやかな声”が響く日を楽しみに(ほんとは良くないけど)。

④みんなで