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思い出の単独行 -甲武信ヶ岳編-

※この記事は以前、別のブログで投稿した記事を加筆訂正したものです。

甲武信ヶ岳、標高は2,475mで奥秩父山塊を代表する百名山です。この山に登ったのは確か2015年の9月末。山の木々が赤く色づき始めた頃だったかと思います。


この甲武信ヶ岳登山は、私にとって初めての泊まり掛けの単独登山でした。日帰りの単独登山は何度か経験していたのですが、宿泊を必要とする登山は自分の体力と技術が不安で、実行に移すのを躊躇っていました。そのため、この登山は準備の段階から常にドキドキしながら計画を立てていたのを覚えています。

塩山駅か山梨市駅のどちらかの駅からバスに乗り、西沢渓谷入口で下車。天気は曇り。ガスが山の上を覆い、一人バス停に下車した私は不安な気持ちで登山口に向かいました。

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甲武信ヶ岳までは徳ちゃん新道を登るルートを選びました。徳ちゃん新道は、事前の地図で急登であることを知っていたため、ゆっくり自分のペースで登り始めます。あの日は平日で天気があまり良くなく、登山客はほとんど見かけませんでした。自分の熊鈴の音しか聞こえず、周りはガスで覆われ幻想的な雰囲気でした。

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想定していたよりも早く甲武信小屋に到着しました。今日はこの小屋で素泊まりです。夕飯はコッヘルで飯盒炊飯をしたのですが、あまり美味しくできなかった記憶があります。外で寂しく一人で夕飯を食べていたところ、同じ宿泊客のご夫婦が私に話しかけてきました。何を話したかは覚えてはいませんが、初めての泊りがけの単独登山の緊張を他の人と話すことで、少し和らげることができました。


だいぶ疲れていたため、その日はすぐに布団へ。寝室が二階だったのですが、一階から夕飯を食べている登山客の話し声や歌声が聞こえてきて、少し羨みながら眠りにつきました。

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翌日、早めに小屋を出発して甲武信ヶ岳に登頂。初秋の青空のなか、朝日に照らされた奥秩父の山々を見渡すことができました。雲に隠れていた稜線が徐々に姿を現していく光景は見事でした。

甲武信ヶ岳登頂後、十文字峠方面の登山道を進みました。甲武信ヶ岳周辺の地図を改めて眺めてみると、山頂近くに千曲川の源流地点があるようで、この時に立ち寄らなかったのは、今考えると非常に悔やまれます。


三宝山を過ぎたあたりだったでしょうか。同じ単独行の男性と出くわし、抜きつ抜かれつの十文字小屋までの道のりとなりました。お互い単独行でしたが、休み休みに出会う度にあの道はきつかっただとか、あそこは綺麗だったとかちょっと会話をしながら歩きました。単独行のもの寂しさをあまり感じることのない道のりでした。

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十文字小屋は、小屋の煙突から煙がモクモクと出ていて、童話のなかに出てきそうな落ち着いた雰囲気の山小屋でした。十文字小屋で先ほどの男性とは別れ、私は毛木平方面に下山します。毛木平までの道中では、道脇に生えた可愛いきのこがが印象的でした。


毛木平に下山後は、少々車道を歩いた先にある梓山バス停からバスに乗り、小海線信濃川上駅に向かう予定でした。しかし、梓山バス停の次のバスの時間が確か何時間も先だったため、信濃川上駅まで歩いて行くことに。今、考えてみると歩くにはかなりの距離があり、だいぶ無謀な判断でした・・。

ちなみに下山した毛木平周辺は長野県南佐久郡川上村です。この村はレタス栽培が盛んで、私が村内を歩いたときも広大なレタス畑が広がっていました。


バス停から歩き始めて数十分後、突然、私の横に車が停車しました。

 「乗っていくかい?」

驚いたことに昨日、私が夕飯を食べていたときに声をかけてくれたご夫婦でした。私と同じ毛木平に下山し、そこから車で東京方面に帰る予定だそうです。ご夫婦に感謝しながら信濃川上駅まで送って頂きました。

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信濃川上駅に着き、無事予定通り旅を終えることができました。小淵沢行きの列車に乗り、山の風景や出会った人々を思い出しながら帰路についたのでした。初めての泊まり掛けの単独登山は、単独行ではあったけれど、人との繋がりを感じることのできた思い出深い登山となりました。

今日はここまで。最後まで読んで頂きありがとうございました。

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