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米澤穂信 「儚い羊たちの祝宴」読書感想

こんにちは、ジニーです。

ずいぶん久しぶりの更新となってしまいました。
読書感想の時間です。

今回読んだのは米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴」です。
以前、「満願」を読んで感想を書きましたが、今回も米澤さんの持つ独特なおどろおどろしたものが満載の作品でした。

■「儚い羊たちの祝宴」はどんな本?

今作、「儚い羊たちの祝宴」も短編集となります。
物語は全部で5つ。
・身内に不幸がありまして
・北の館の罪人
・山荘秘聞
・玉野五十鈴の誉れ
・儚い羊たちの晩餐

それぞれの物語は話ごとに主人公も違うのですが、一つの共通点があります。
それは「バベルの会」という読書サークル。
教養と品格を備えた上流階級の女性たちが集う大学でのサークルなのですが、この独特な集まりが、いろんな形で不気味な物語を彩っています。

■物語の彩る登場人物と「バベルの会」

登場人物と「バベルの会」との関わり方は様々ですが、
4つ目の話までは現存する「バベルの会」と、
最後の話はすでに無くなった「バベルの会」と、
読み進めていく中で、存在感を大きくする「バベルの会」がなぜ無くなったのか、それを知る驚愕の背景を最後に知ることになります。

どの話も常人には理解しがたい考えや視点が織り込まれているのですが、それが少し古い時代背景や、上流階級特有のしきたりなどを介して「そういうものだ」と受け入れながら読む形となるのですが、最後の最後に、しっかりと現実に引き戻してくれる「決定的な一文」で何とも後味の悪い読後感を演出しています。

もちろんネタバレになるので、その結末はここには書きませんが、ネタバレサイトなどで見てもこの気持ち悪さは感じきれないと思います。
物語を最初から読み進めていくうちに忍び寄ってくる違和感のようなものが、最終的な一文のダメージを着実に大きくしていく、そんな感じです。
是非、読んでこの読後感を確かめてほしい。

■中でもお気に入りの話は

個人的に好きなのは、
「北の館の罪人」。
これは、こういう結末につながるとは思わなかった。
ちょっと意外性もあり、主人公に架せられた長く続く枷がとどめの一撃として放たれます。
伏線もしっかりしていてとてもよかった。

いわゆるイヤミスと言われるジャンルの本ですね。
好き嫌いのハッキリと分かれるジャンルですが、興味をもったかたは是非、手に取ってみてください。
意外なイヤミスの沼を感じてもらえるかもしれません。

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