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原発事故と電通、農家

 あの東京電力福島第一原発の大事故から13年が経とうとしている。今年元旦には石川県能登半島を震度7の大地震が襲い、志賀原発などの安全性が問われる事態となっている。
 そんな折、2024年1月23日(火)、「世界と未来の加害者にならないために~原発事故から13年目」というイベントが「武蔵野公会堂大ホール」(武蔵野市吉祥寺南町1-6-22)で行われた。
 福島第一原発事故以来、地道な取材を続けている漫才師でジャーナリストの「おしどりマコ&ケン」からは、広告大手の電通がいかにメディアに原発に関するネガティブな情報を出させない、その代わりにポジティブな情報発信させる指南をしていたかをつまびらかにした。
 また、国、とりわけ農水省が福島県の農家たちの放射能による健康被害にいかに無関心であるかも明らかにした。
 

 おしどりマコ&ケンは原発事故以来、東電の記者会見に通い、様々な省庁、地方自治体の会見、学会、シンポジウム、被害者による裁判、作業員や市民との交流を通じ、メディアでは取り上げない問題を取材し続けている。
 2016年には「平和・協同ジャーナリスト基金」奨励賞を受賞した。
 おしどりマコは「自分が取材してまず分かったのはテレビや新聞に出てこない情報がいかにたくさんあるかということです」という。そのうえでおしどりマコは「行政が電通に何をさせていたか」を話した。
 簡単にいうと「口封じ」「心封じ」「思想封じ」だという。
 福島のメディアに勉強会を通じて電通がレクチャーして「原発を不安だといわせない」ように指南していたとおしどりマコ。

TOKIOに福島の桃を食べさせよう!
 「TOKIOに福島の桃を食べてもらうのが一番ポジティブな効果があるようです。でも「安全です」でなく「美味しいです」と言わせるようにと。「安全です」だと安全でないことを想起させるからです」。
 いろいろな省庁が予算をとって電通に頼んでいるが、その電通による「取材誘導」の手引きで一番ポジティブな福島ネタは「フラガール」だという。反対に一番ネガティブなトピックは「子どもの甲状腺被爆」なのだそう。
 「ネガティブよりもポジティブな原発関連記事を増やすことが目的です。いくらメディアにガッツある記者がいても、こういう仕組みが背景にあるので、上司から「これは出せない」と記事を止められているのではないかと思います」とおしどりマコは言った。

汚染地域の農家の闘い
 次に、汚染地域の「農家の闘い」を取り上げた。福島の農家たちは年2回東京に来て自分たちの状況を訴えている。昨年は12月に来たばかりだ。「自分たちの被ばくについてどこか対策をとってくれ」と訴え続けている。
 事故後、肥料としてカリウムを大量に農地に撒くように指示されたという。カリウムは放射性物質のセシウムと似ているので、農作物に(放射性物質の)セシウムが入るのをブロックしてくれるからとの説明だった。
 「でもセシウムがたくさん入っている土地に効果があるとは思えない。土地自体のセシウムがこれによって減るわけでない。農民たちはセシウムを被ばくし続けているのです」。
 事故で出た放射性物質の一つがセシウム137で、この放射能が自然に半分になる「半減期」は約30年と長い。
 国との話し合いで農家側は「土壌の表面汚染を測ってくれ」と要求し続けている。しかし、国は空間線量を測っているとの一点張り。
 経済産業省からはよりによって「事業者から労働者を守るのが目的で、農家は自営業なので対象にならない。自己責任だ」との言葉。
 頼りにしていた農水省からは線量測定の目的は「食の安全のためであって労働安全のためではない」と一蹴された。
 これに対して当然、農家からは非難ごうごうとなった。
 「農民の命を何だと思ってるんだ!」と。
 そして「一カ所でいいから空中ではなく土壌の表面ベクレルを測ってくれ」との切実な声に対しても「目的は健康被害とか労働安全でない」ので空間線量の測量だけで十分だとの答えを繰り返した。

木で鼻をくくったような説明
 さらに、信じられないような説明が繰り返されている原子力規制庁の会見やブリーフィングについてもおしどりマコは明らかにした。
 原発の稼働年数の上限撤廃をするための法案審議が続いていた最中、その前にエネルギー庁と原子力規制庁とが事前調整をしていたという疑惑に関して記者会見などで規制庁は度々質された。
 おしどりマコによると、規制庁による記者ブリーフィングでは、明らかになった内部文書にある稼働年数の上限に関しての記述について、「組織」としてでなく「担当者個人」が「若干書きなぐった面がある」「若干筆が走った面」「若干想像をたくましくして書いた」「頭の体操にすぎない段階」というような、記者たちを小ばかにしたような説明を繰り返した。
 エネルギー庁と規制庁は「会っただけで話し合いをしていない」とも。これに対しては記者たちも激怒したという。
 ある記者は「伝達だけなら電話やファックスですむでしょ。会ったってことは事前調整ですよ。そういう判断で(事前協議と)うちは書きますから」と言い放ったぐらいだ。

何のための安定ヨウ素剤の備蓄か?
 また、震度6弱以上の地震があると合同対策本部が立ち上がるが、今回の能登半島地震の場合は万が一のための「安定ヨウ素剤」についての情報が出てこなかった。「問い合わせると、必要な状況に至っていないので(備蓄を)確認していない。備蓄状況を確認するとなると自治体に負担をかけるのでお願いできない」という答えだったとおしどりマコさん。
 安定ヨウ素剤は放射性ヨウ素による甲状腺被ばくを低減する効果がある。
 しかし、緊急事態に使う準備をしないでおいて一体何のための安定ヨウ素剤の備蓄なんだろう。自治体に負担をかけるのがダメだという理由で、本来守るべき住民をリスクにさらすというのはどういうことなのか。
 第2部は金子あいさんの朗読。金子さんは東京藝術大学大学院環境造形デザイン修了。art unit ai+主宰。
 第3部ではBimBomBam楽団のジプシージャズが披露された。メンバーはOhyama "B.M.W." Wataru(トランペット)、手島大輔(ギター)、ヤマトヤスオ(ベース)、奥田真広(パーカッション)、乙竹優吾(ピアノ)。
 

 
 
 



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