8・21原子力規制委会見
今月8日、宮崎県で大きな地震が発生し、初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が出たが、原発そのものへの影響はなく、連絡体制と情報収集を強化すべき事態だったと原子力規制委員会の山中伸介委員長は2024年8月21日(水)に述べた。
定例記者会見で、山中委員長は「地震そのもので原子力発電所のサイトに直接大きな事象が生じたという報告は受けていないし、それ自体だけで警戒事態に陥るという状況ではなかった」と話した。
午後4時過ぎに地震が発生し、同7時15分に巨大地震注意情報が発せられた。「私自身警戒態勢をとる必要はないという判断をして、直接原子力規制庁のほうに対応を指示した。事業者のほうは原子力防災について再度確認をするよう指示をした」と山中委員長。
今後再び南海トラフ地震注意情報あるいは警戒情報が発せられた場合の対応を問われ、山中委員長は「原子力発電所のサイトの状況が特段問題なければ今回と同じような対応をとろうかと思います」という。
ただ、「警戒の中身がこれまで想定されているような地震、津波の状態をはるかに超えるような警戒情報なら、委員会を開いて何らかの対応をすることになるが、サイトに特に影響がなければ、今回と違う対応をとるとは考えていない」と付け加えた。
全国29都府県707市町村の対象地域には原発が4ヵ所立地しており、今回もうち3カ所は特段の対応は取らなかった。
中部電力浜岡原発(静岡県)は注意情報を受けて対応を行ったが、四国電力伊方原発(愛媛県)、九州電力川内原発(鹿児島県)、日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)は特段の対応を取らなかった。
東電福島第一原発6号機の火災について
東京電力福島第一原発6号機で金属板の絶縁体が湿気とチリによって劣化して漏電とショートが発生、使用済み核燃料のプールの冷却が一時停止したが、この件について山中委員長は「発表のように設計時のミスなのか、経年劣化なのかについては今後の調査結果、審査結果次第だ」と話した。
山中委員長はさらに付け加えて「いづれにしてもサイト全体の経年劣化が安全に影響を及ぼすことのないようにきちんと作業が進むようにモニタリングしていくことが重要」であるという。
また、東電福島第一原発からの汚染された水を処理したもの、いわゆる「ALPS処理水」を海洋に放出し始めてからもうすぐ1年になるが、「大きなトラブルもなく、きちんとモニタリングしたうえで海洋放出が続けられている」と問題なく進められてきたと評価した。
そのうえで、山中委員長は「やはり事故後10年以上経ったサイトの状況も事故当初から大きく変化していると理解している」
「東京電力もそういう状況を理解し、例えば、装置の経年劣化ですとか、安全上の手順の再確認とか、そういうリスク度評価、作業管理についてもう一度見直してもいい時期に来ているのではないかと理解している」という。
デブリの大規模取り出しに向かっての第一歩
さらに、明日(8月22日)、福島第一原発2号炉からのデブリ(溶け落ちた核燃料が固まったもの)の初の試験的取り出しが始まる。
「まず、大規模なデブリ取り出しに向かっての技術開発の第一歩だと思いますし、デブリの分析についても初めてのことでまず第一歩で、様々な技術について今回を機に蓄積していって、大きな規模の取り出しに向け着実に安全に進めていってほしい」と山中委員長は述べた。
「やはり廃炉が安全に着実に進むことが第一の目的なので、そこを目指して審査を行っているし、様々なトラブルを乗り越えていくよう指導している。(当初の予定から)3年遅れですが、まずは着実に一歩進めて頂く」。
今回の取り出し方式では「ペデスタル(原子炉圧力容器が乗っている土台)の開口部に近いところしかサンプリング出来ない方式」という。
そのため、「どういう正常なサンプルがペデスタル近くにあるのか確認するのがまず第一歩」だと山中委員長は話した。
デブリは、2011年3月の福島第一原発事故で2号炉で炉心溶融(メルトダウン)が起きて、核燃料が炉内の金属などと混ざって発生した。1号機から3号機までで計880トンあると推計されている。
今回の試験的デブリ取り出しは耳かき一杯程度の数グラムとされる。
防潮堤の不良施工をめぐっての意見対立!?
今年8月2日、日本原子力発電の東海第二原発の防潮堤の不良施工について原子力規制委員会は臨時会合で、新規制基準に不適合であるという審査書を作成するように指示した。
日本原電は基礎部分を残して対応するとしている一方で、原子力規制委員会は7月初めに基礎の部分が使えなくなることを前提に構造物の設計を見直すように指示を出している。
この矛盾について質問され、山中委員長は「8月末から9月に審査するが、審査の会合の中で設計が安全上許容できるかきっちりと審査してもらいたいと考えている」と話した。
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