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イワナと環境と人間

 イワナは狭小な源流部に棲み、冷たい水を好む。それはイワナが氷河期に日本にやってきた魚の生き残りだからだ。
 彼らは産卵のために川に遡上するという習性があったので、川と海を行き来する生活をしていた。
 しかし、約一万年前に間氷期に突入して海水温が上がると、ふるさとに帰れすに日本に取り残されたものたちがいた。
 彼らは暑さから逃れるために山奥の狭い源流部へ逃げこむと、長い年月をかけて川ごとに独自の進化を遂げていった。
 現在、イワナの南限は奈良県だといわれている。
 古くから日本人とイワナは深い関りを持って生きてきた。山村部に暮らす人間にとってイワナは貴重なタンパク源だった。
 各地の民謡、伝承にも、イワナは乱獲を戒める象徴として登場する。マタギや職漁師たちは滝上にイワナを放したという逸話も残っている。


 しかし、イワナたちは様々な問題に直面しているーダムといった開発や乱獲、養殖魚の放流そして温暖化・・・
 この映画は研究者や漁業協同組合、釣り人たちの証言によってイワナを取り巻く問題を明らかにしていく。


 「種を守るのはどういうことなのか?」
 この作品のテーマであるこの問いの答えを考えることは、日本人が忘れてしまった自然との関わり方を取り戻すことなのかもしれない。
 この映画「ミルクの中のイワナ」(2024年/日本/70分/監督:坂本麻人)は2024年8月16日(金)までミニシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」(東京都北区東田端2-8-4)で上映されている。
 問い合わせは℡03-6240-8480。

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