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卒業の日まで生き抜いて

家の近くの中学校の卒業式があり、その様子を外から観察していた。
式が終わり、先に父兄が外に出てきて、校舎から姿を現す子供たちを待っている。
自分の頃よりもずっと子供の数は減ったが、いつまでも、わが子の卒業を迎える親の気持ちは変わらない。

多感な時期でもある中学校生活を無事に終えることが出来るということは、今の時代ひどく奇跡的なことのようにも感じられて仕方がない。
 
ふとあるニュースに目をとめた。
2022年(令和4年)の自殺者数は2万1881人。そのうち子供の数が514人を超えるという。
うちわけは、高校生354人、中学生143人、小学生17人。

彼らはまだほんの子供に見える。
人間の、世界の、世の中の、社会のたった一部分しか見ていないのに、その途中で生きることから離脱しなければならないのは残念だし、信じがたい。

人間にとっての大仕事とは「最後まで生き抜くこと」ではないかと常々思う。
どんな生き方をするか、どういうふうに飯を食うか、どんな人と出会い関わっていくことになろうとも。

生きている間には当然のことながら様々な問題が浮上する。だが、つまるところ死ぬまで生きる。生き切るという使命を果たさなければ、人間という形に命を吹き込まれ、この世に生まれてきた甲斐がないと思うのだ。

その途中には、つらいこともあるだろうし、逃げたくなることもある。

逃げたければ逃げればいいのだ。
堂々と逃げていい。
だが、逃げる先は死ではない。
それは間違いだ。

死んではいけない。自ら生き続けているもの、生きようと戦っている細胞たち一つ一つの息の根をとめてはいけない。
もっと楽しいことを欲しているであろう、一つだけ与えられている魂を、思う存分楽しませる前に、その魂を手放してはいけない。

世の中には理由なんていらないものがある。
嘘をつくこと、人の物を盗むこと、人を殺すこと。
これはしてはいけない。
なぜ? 
その問い自体が間違っている。この世には「誤った質問」があるという。
理由なんてない。ダメだからダメなのである。

わが子はかわいい。そこに理由はない。
かわいいからかわいいのである。
愛しいから愛しいのである。
一かけらの理由もない。
絶対だから、絶対なのだ。

同じように、
死んではいけない。

ここにも理由はない。
特に、親より先に死んではいけない。
絶対にいけない。

理屈とか意味もない。
事実があるのみである。

日々、不安を抱き、絶望の淵にいる小中高生。
実際には、数字よりも、ずっと多くの人たちがこの世から消えたいと考えている。

だが、死んではいけない。
生き抜いてくれ。

今目の前にある自分に合わない環境から逃げてもいい。ただそこが自分には相応しくな場所にすぎないということが往々にしてある。

その与えられた教室で過ごすことが出来る大勢の生徒が、特別というわけではない。優秀なわけでもない。
弱くて怖くて自分の力をなんとか誇示したくて、簡単に従ってくれそうな虫けらたちを率いているだけということも少なくない。

そんなそりが合わない人たちに、無理に合わせる必要なんてない。無理やり合わせている人間は、自分の命を生きていないかわいそうな人でもある。

そんなヤツラはこちから切ってやる。

私もそうした。無視されたときには、こちらから無視してやったのだと平然として何食わぬ顔をしていた。
つまらなくなったのか、自然と相手から無視するのをやめたようだった。だけど私は二度とその人たちに自分から声はかけなかった。
私はあなたたちとはレベルが違うんだって思っていた。

それで今まで生きのびてこられたのだから、あの時の私はその人たちにも、そして自分自身にも勝ったのだと思う。

だから。
苦しかったら逃げて下さい。だれが逃げることは弱いことだと決めたのか。スポーツで体を鍛えているのはわけが違う。

命の危険を感じたら(それは自分の魂がどんどん委縮してしまい、楽しさをどこにも見つけることが出来ない状態ということです)思い切って逃げて下さい。

白旗を上げてください。

打ち勝てとか、協調しようとか、その状態になじんでいこうなんて言いません。
あなたにも非があったんじゃないの? なんてバカみたいなことも言いません。

その白旗は、自分にとってつまらない、おもしろみのない生活を発見した際に立てる目印です。
時代とか地域とか、行くと決められた学校が単に肌に合わないだけなのかもしれない。

人間は環境によって生き方なんて変わります。
自分にとってより良い関係を築ける人との間で生きるのが、一番自分の強みを出せる条件なんじゃないかと思います。

いつの日か、他の白旗を上げてきた人たちと遭遇する時が来たら、
「そうそう。私も自分とレベルが合わなすぎて学校捨てたクチ」とお酒でも飲みながら言い合えるようになれればいいのです。

本当に弱いのは、自分の命が生き生きと動きやすい場所を探り当てられずにいる人です。
その場所に居続けることで自分の命、魂が泣くのなら、迷うことなく逃げて下さい。
生きているステージから逃げるのではなく!
生き抜ける場所を変えましょう。たったそれだけのことです。

新しい場所で魂を燃やして下さい。それが最後まで生き抜くための方法の一つだと私は思います。


◆◆◆◆◆

今日はあなたが通った中学校の卒業式でした。
我慢をしすぎたのかもしれません。
耐えなければと思ってしまったのかもしれませんね。
あなたを守るための手段はきっとあったはずなのに。

逃げてもよかったんだよ。
隣の中学校だったら違う生活が待っていたかもしれないのにな。 

小さな命を燃やしきって、あなたは散ってしまった。

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