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#463 金融ジェロントロジー 〜投資判断は何歳頃するべきか〜

ここ数ヶ月で為替や株式、債券(金利)相場は大きく動きました。儲かる損するということから視点を変えて、年齢と投資判断についての論文を見つけたので、メモ。


1、そもそも何のために投資するのか?

岸田首相が「資産所得倍増計画」なるものを唱えました。いろいろと細かい話はありますが、ざっくり言えば「貯蓄から投資へ」という従来からの話の延長と言っても良いかと。

では、なぜ投資しなければならないのでしょうか?日本国というレベルではなく個人レベルで。

☑️ 低金利でお金が増えないから
☑️ 老後が心配だから
☑️ 投資で大きく増やしてFIREしたいから

上記の他にも人それぞれ、でしょう。
そもそも投資する前にまずは貯蓄が必要なステージの方もいるでしょうし。

最も多いと思われるのは(会社員の場合)ライフステージにおいて、定年前後で収入の形態や額が大きく変わるので、その調整をしたい、つまり、老後が心配だから、現役のうちに貯蓄したい、という目的です。


2、退職金が入ったら運用する、は正解か?

正社員の場合、退職金という制度があります(ただ多くの企業では勤続年数が短いとあまりもらえないケースが多く、転職が盛んになっている現在ではあまり退職金がもらえない、という場合も考えておかなければなりません)。

私は金融機関で働いているのですが、退職金はまとまったお金ですし、運用しないといけないかも、と思うタイミングでもあるので、狙いやすい(逆にいうと、狙われる)資金です。

現在ではNISAやiDeCoといった制度を利用して積立投資をしている方も多いのですが、それでも退職金で初めてまとまったお金を手にして、運用を考える、というケースはまだまだ多く見られます。

さて、それで良いのでしょうか?

今回は、「金融ジェロントロジー」=「金融老年学」という観点で見ていきます。

なにそれ?というところですが、慶應義塾大学ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センターのホームページでは以下のように説明されています。

ファイナンシャル・ジェロントロジーとは、高齢者の経済活動、資産選択など、長寿・加齢によって発生する経済課題を、経済学を中心に関連する研究分野と連携して、分析研究し、課題の解決策を見つけ出す新しい研究領域です。


高齢者の振り込めサギや投資話の被害などがニュースになりますが、それ以外にも、金融庁には、特に高齢者やその家族から金融機関で運用商品を購入したことに伴う苦情が寄せられいます。最近では仕組み債の取り扱いを相次いで停止していましたが、これも金融庁が苦情の多さを問題視した結果です。


正直、証券会社や銀行の説明は割と(うるさいぐらい)しっかりしています。しかし高齢者は特に苦情が多くなる。なぜか?

その辺も研究対象としているのが、ファイナンシャル・ジェロントロジー、というわけです。


3、大きな額の投資判断は50代までに!

先ほどの慶應義塾大学ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センターの論文には年齢で金融リテラシーの関係を研究したものがあります。


まず、金融に関する質問に対する正答数の推移を見たグラフです。
男女ともおおむね55〜65歳がピークとなっています。


では、退職金をもらう60歳ごろというのはちょうどいいかな、という感じですが、金融に関する知識に「自信がある」と答えたのに誤答が多かったという「自信過剰」の推移を見たものです。
年齢とともに低下しますが、55歳を底に反転し、年齢を重ねるほど、「自信はある」のに「間違う」のが増える、つまり「自信過剰」が増えていることがわかります。

さらに、その「自信過剰」の勢いで55歳前後を底に、リスクのある投資への意欲が増えています。
自分の知識や判断力が落ちているのに気づかず、昔の「分かっている」「知っている」イメージのまま(=自信過剰のまま)年齢を重ねる…危険です…

これらから、大きな金額を投資する場合の判断は50代のうち終わらせておくべき、と言えます。

お金まだないのに?と思われるかも知れませんが、そもそも50代のうちに

☑️ 定年時にどれくらいの金額が受け取れるのか
☑️ 年金額はどれくらいでいつからもらえるのか
☑️ 再雇用制度ではどのような条件なのか
☑️ 家計にはそもそもなににどれくらいかかるのか
☑️ そもそも定年後、自分は、そして家族はどのように暮らしたいのか

といったことに関して情報を入手し、話し合い、整理、決断しておくことが重要だ、ということです。


4、まとめ

いかがでしたでしょうか?

高齢者が高速道路を逆走したり、大きな交通事故を起こしたりしたことで、免許返納の話が話題になりました。でも、多くの高齢者は「自分は大丈夫」「自分は運転がうまい」と感じているそうです。

悲しいことではありますが、今回の論文でもそれは裏付けられているように思います。

50代のうちに大きな決断の準備はしておくべき、でしょう。

私もアラフィフですが、まだ50歳、されど50歳、なんですね。

会社の退職金&年金制度調べてみよう、と思いました。

そして、定年後、どう過ごしたいか。
…思えば、それが最も大事ですね。


最後までお読みいただきありがとうございました。
金融ジェロントロジーというまだ新しい研究領域のご紹介でした。どこかご参考になれば嬉しいです。


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