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ファッションと文学(後編)(2021年7月24日の日記)

六本木の文喫で行われていた「2着のワンピースができるまでー 藤澤ゆき×朝吹真理子×村田沙耶香トークイベント」の視聴が終わりました。

デザイナーの藤澤ゆきさんが、小説家の朝吹真理子(テーマ・夢)と村田沙耶香さん(テーマ・記憶)のために作ったワンピースにまつわるトーク、とても興味深かったのでより抜いてまとめます。

前編はこちら。

藤澤さんが作ったワンピースは、可憐だがどこか荘厳でもあった。特に朝吹さんの方はこいのぼりのように長く、およそ日常では着れそうにない。


その理由を「リアルクローズに寄せると創造の幅が狭まるから」と藤澤さんは語っていた。象徴としての服にする、でもぎりぎり着ることはできるというところを目指したそう。

それを聴いていて、2001年の横浜トリエンナーレに展示されていたという塩田千春さんの砂の巨大なドレスを思い出した。あれは完全に着るためのものではないが、儚さが示されているところは少々似ているようにも感じた。

その後、それぞれの服の思い出が語られた箇所がユニークだったので残しておきます。

藤澤さん:ファッション関係に勤める父親が選んだ服を小5くらいまで着ていた。ずっとスカートしか選択肢がなかったが、周りでユニクロのサブリナパンツが流行っていたのでそれを母親とこっそり買いにいき、初めてパンツというものに触れた時が印象的だった。

村田さん:大学生の時、高校時代の白シャツをリメイクし袖を2倍にした。当時は袖が長ければ長いほどかわいいと思っていた。裏原宿ではあたたかいまなざしを受けたが、それ以外では奇異な目で見られた。自分でリメイクしたことが嬉しくて、無敵な感じがしたけれど周りからはそう見られなかった。

朝吹さん:同じ服を毎日着るのが好き。小学生の時、お気に入りの茄子紺のスウェット上下と真緑のスウェット上下をローテーションで着ていた。小学校の終わりくらいに行った夏合宿で、憧れの先輩が白黒ボーダーのワンピースにポニーテール姿で、一緒に沼を歩いた。それ以来「いい女は黒一色でポニーテール」となり、茄子紺から黒一色好きへ移行した。

3人の話、いかがだったでしょうか。さて自分はどんな思い出を持っているだろうと、考えさせられる気がしませんか。

最後に質疑応答があり、脱線もしつつ対談は終了。「小説家とデザイナーは近い? 」という質問に、藤澤さんはかたちある物に相対するかそうでないかの違いを、村田さんは手と脳が直結する作業の近さを述べられていました。

実験的に作ったものを未来に託す3人のクリエイター。彼女たちが作ったものと過ごした時間の結晶が、六本木の文喫で展示されています。8月9日まで。喫茶スペースに入らず、無料で見られますのでぜひ。


手引きとなるおまけ

村田さんのリメイクの話を聞いて思い出した記事です。書き手のデザイナー、横澤琴葉さんは「文學界」に寄稿されています。


モデルの前田エマさんが藤澤さんの服について語った連載より。写真も豊富でわかりやすいです。







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