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作品群

31
散文詩、短歌、ショートショートの作品群。
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2020年7月の記事一覧

十月櫻の自死を待つ

 春光のなかにある桜色の、儚くも美しい季節よりも、わたしは、うら寂しいばかりの十月桜と共…

朽木裕
4年前
1

ひとり夏を悼む

 外に出てみたら風が完全に秋のそれで戸惑ってしまう。蝉は死に絶えた。夏は逝ってしまった。…

朽木裕
4年前
3

レム

「…rapid eyes movementだね」 「なにが、」 「最も深い睡眠状態で、覚醒には強い刺激が必…

朽木裕
4年前

透明骨格標本

 酸素と染色体を使うことで蛋白質を 透明に軟骨を青に骨を赤に染め上げる透明骨格標本。  …

朽木裕
4年前

電車が参ります

 踊る月は赤い死を孕んで僕はと言えばプラットフォームでぼんやりと電車を待っている。黄色い…

朽木裕
4年前

曼珠沙華心中

 ねぇ、私と戯れてみて、そう声は響いてがさがさと河岸の草を掻き分けて逃げまどう。わたしは…

朽木裕
4年前

さようなら、ベテルギウス

 肉眼で観測できる、数少ない変光星。星座中で最も明るいとされるバイエル符号αが付けられているけれど、極大期を除いたらβ星のリゲルよりも暗い。まだ月白しか見えない夕焼け間近のギリギリ青空。がたん、がたたん、帰宅ラッシュの電車の、音。ぼぅっと眺めるベランダには乾ききらなかったカーペットがだらり、死体さながらに垂れて、いつぞやかの台風が連れてきた砂利を足裏に感じる。君はもう居ないけれど、こうやって爪跡を僕に残してくれているのかな。ベランダで星を眺めた冬の日を思い出す。まだ、星も見え

生きてたらいいことあるの

 ぷわん、と空に放たれたしゃぼん玉は微かに虹色にきらめきながら、ぱちん、と弾けて消えた。…

朽木裕
4年前

ひかり

希いはやわらかな音、ひかり。恒久的に胸に齎される、つきんと刺すような痛みはきっと多分、生…

朽木裕
4年前

落下速度、肉塊

 一年で二月が一番寒いって、本当? 僕の住んでいる地域ではもう雪も降らないだろうな。年に…

朽木裕
4年前

その季節は

篠突く雨が止んだなら秒と待たずに蝉時雨。鼓膜から流し込まれる季節。見上げれば、もう入道雲…

朽木裕
4年前

ハイドランジア

五月も末。そろそろ紫陽花の季節だなぁ、とからからに乾いたベランダで洗濯物をはたきながら物…

朽木裕
4年前

ぐちゃぐちゃな感情で愛されて生きていたいよ

君の所為だと叫んで部屋を飛び出して気がつけばいつもの埠頭公園にいた。名前がわからないまま…

朽木裕
4年前