生きてたらいいことあるの

 ぷわん、と空に放たれたしゃぼん玉は微かに虹色にきらめきながら、ぱちん、と弾けて消えた。夜を待つばかりの空に向けて、慈悲を許さない僕の狭い世界に向けて、溜め息みたいにしてしゃぼん液に浸した筒を、ひと吹き、ふた吹き。ああ、どうしようもないな、勝手に溢れてくる涙は乾き目ってことにして、温さを僅か残した屋上に大の字になる。飛行機雲。飛ぶ鴉。電線が風にたわんだ。

「死んだっていいことないよ」

 声を真似て喋ってみる。吐き気がした。じゃあさ、生きてたら、いい事あんのかよ。直接糾弾は出来るわけもなく、曖昧に笑った。その笑顔の自分を殴りたい。殴って殴って殴って、跡形も無く消えたい消えたい。消えたい。

 しゃぼん玉はいいよな、僕だって跡形も無く消え去りたいよ。

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