電車が参ります

 踊る月は赤い死を孕んで僕はと言えばプラットフォームでぼんやりと電車を待っている。黄色い線の内側、内側、内側、と女性の声でアナウンスが繰り返される、と思っているのは僕の脳内だけだったりする、かも。でも内側なんて曖昧な定義はよくないよ、あちら側からみたら内側は線路じゃあないか、なんて、僕は黄色い線の内側を何故だか毎日、強く強く意識してしまう。特急列車が巻き起こす風、に煽られて線路に落ちたらどうしよう、と毎日足が竦むのは死んだらどうしようではなくて、線路に落下した僕を見る、見る、見る、無数の目。人間の数だけ気持ちがあるなんて怖くて、怖くて涙が出るよ。黄色い線の内側、内側、と呟きながら。

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