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薬剤師をサポートするスタッフ

以前、薬剤師が専門性を活かしてできることをまとめて書きましたが、薬剤師は専門教育の中で学んだことを活かすことで、薬による体調変化を読み解き、薬物治療が効果的に、悪影響なく行っていけるように支援していくことができます。

しかし、それは薬剤師だけの力で為せるものではありません。

今回はその薬剤師のもつ専門的な力を発揮するために必要な仲間のことについて書きたいと思います。

専門性を活かすために必要な「場」

この専門的な力を発揮するためには、薬剤師の能力はもちろんですがもうひとつ現状では必要になってくる要素があります。それは「場」の力です。

たとえば、駅前で薬剤師の資格を持った人が、机を広げて健康相談に乗りますという看板を立てて座っていても、なかなか話を聞いてくれる人や相談に来てくれる人は少ないのではないかと思います。

しかし、それが薬局と言う場所であれば、同じことを話したとしても、多くの方が薬剤師の伝えることに耳を傾けて聞いてくれたり、悩みや問題、今の体調などの状態を教えてくれたりします。

この適切な「場」の力があると、薬剤師は自分の持っている専門性をより簡単に活かす機会を得ることができるのではないかと思います。

しかし、そのようなメリットがある一方で、デメリットもあってこの「場」今回の話では薬局という「場」を用意しようと思うと、その「場」を維持するために様々な薬剤師として専門的に学んできたこと以外の力を使ってやらないといけないことが出てきます。

例えば、薬局内の薬の在庫を管理したり、スタッフのシフトを調整したり、薬局内の設備の電源を入れたり、掃除をしたりなどなど

これらの仕事は、薬局という「場」を用意するためには、極めて重要な仕事なんですが、重要な仕事だからといってこれらのことに薬剤師が時間と労力をたくさん費やしてしまうと、人一人ができることには限りがあります。専門性を活かして患者さんに向き合うための時間と労力は、少なからずバランスを調整せざるを得なくなるのではないかと思います。


では、どうしたらいいのか?


その一つの手段として、薬剤師でなくてもできるけれども、薬局という「場」において重要な仕事は他のスタッフに任せるという方法があるのではないかと思います。幸いにも、薬局には薬剤師の他に調剤事務スタッフが一緒に働いていることが多いです。
この人たちにサポートをしてもらうことができれば、薬剤師は患者さんに専門的にもっと向き合って、薬局全体としてもっといい仕事ができるではないかと思うのです。

この考えをもとに、薬剤師と調剤事務が協力して業務を実践できる体制を作っていき始めました。
大枠のところは、日本在宅薬学会で実施されているセミナーなどを参考に組み立てていきました。

ただ、それを始める当たって、私には2つ気になることがありました。

気になる1つ目「調剤事務という役職から連想する仕事」

1つ目は、調剤事務という名前です。薬局内の薬剤師が専門的に学んできたこと以外の力を使ってやる仕事は、事務仕事も確かにたくさんあります。しかし、事務仕事以外の仕事もたくさんあり、例えば棚から薬をとって薬剤師の元まで持っていく作業などです。こう言った仕事は、薬生総発0402第1号「調剤のあり方について」にもあるように、これから薬剤師が専門的を活かしていく中でどんどん増えてくると思われます。

そうしたときに、「事務」という役職の名前だと、働くスタッフは「事務なのになんで事務以外の仕事をやらないといけないだろう?」という思いを少なからず抱いてしまうかもしれません。
また、仕事を任せる薬剤師にも、「あの人は事務なのに事務以外の仕事を任せてもいいんだろうか?」と気になってしまうかもしれません。

このように調剤事務という役職が連想させるイメージによって、薬剤師や調剤事務に精神的な負担をかけてしまうのは、エネルギーの使い所としてとてももったいないと思いました。

気になる2つ目「薬剤師と調剤事務の関係性」

2つ目は、薬局内における薬剤師と調剤事務の関係性です。

ある日、ものすごく外来の患者さんがたくさんこられて混み合っている時のことでした。
待っておられる患者さんの状態をみると患者さんに服薬指導を行うよりも、薬の準備が全然追いついていない状態だったので、私は調剤室で患者さんの薬を準備する業務を担うことにしました。

しばらく、せっせと患者さんの薬を準備していくと、患者さんの薬の準備よりも今度は服薬指導で患者さんに対応する方が滞り始めてきたのです。

しかし、私は必死で患者さんの薬を準備していたので、そのことになかなか気づくことができませんでした。
その日の業務終了後、店舗の片付けをしながら事務の子はと今日は忙しかったねなんて話をしながら、混み合っていた時に服薬指導待ちのところが滞っていたところに気付けなかったことを話しました。

すると、「そのとき、私も服薬指導が滞っているなって思ってました」と言われたのです。私は、「わかってたんやったら言ってくれたらよかったのに」と言うと、事務の子は「そんなん先生によう言いませんよ(笑)」といった感じで言われたのです。

業務の全体の動きをみて、誰がどこで役割を果たすことが全体にとって一番良いかを考えるのは、薬剤師でも調剤事務でもどちらでも担うことができることだと思います。
薬剤師の専門的な判断が必要な場面なら、薬剤師に言えないというのはわかりますが、そうではない場面において、上下関係?のようなものによって良い意見や考えが言えなくなってしまうのは、とても残念だし、もったいないことだなと思いました。

この上下関係?のような薬剤師と調剤事務の関係性も、不毛な多忙や要らぬ気遣いによってお互いが消耗する原因になると思いました。

気になる2点を改善する方法

この気になる2点を改善する方法として考えたのがシンプルに役職の名前を変えてしまえば、問題が解決できるのではないかと思いました。

調剤事務ではなく、薬局内で担う役割にあった名前で、薬剤師との間に上下関係?のようなものを連想させない名前です。

そのような名前として、「Pharmacist Partner(PP)」という名前を考えました。そして、調剤事務という役職をなくし、全ての調剤事務をPPとすることにしました。

Pharmacistは、医療職は様々ありますが、薬局で薬剤師をサポートすることに特化したスタッフになってほしいそんな思いを込めました。

Partnerは、同等な仲間というような意味があります。薬局において、役割は違えど、薬剤師と同様に重要な役割を担う、上下関係ではなく、対等な存在となってほしいそんな思いを込めました。

そんなPPの薬局における役割は、患者さんが少しでも健康で過ごせるように、専門性を活かして患者さんと関わる薬剤師を患者さんの元に届けることを役割として働いています。薬剤師でなくてもできる薬剤師の専門性を活かして行う仕事以外の仕事を担うことではなく、そのためのあくまで1つの手段です。他にもあらゆる手段を使って患者さんの元に薬剤師を届ける仕事を担ってくれています。

Pharmacist Partner(PP)と協働を開始して

現在、薬剤師とPPが協働をして患者さんの支援を行なっていくことで、薬剤師はPPなしに自分たちの仕事は成り立たないというほどに薬局内でとても重要な役割となっています。

また、PPは患者さんをよくするためには、薬剤師が専門性を発揮して患者さんへ対応して結果を出せるかが大きなポイントになります。なので、PPたちは薬剤師が自分たちの繋いだバトンを受けて、ちゃんと専門性を活かした仕事をしてくれているかということをとても気にしながら薬剤師と関わっています。
これは薬剤師にとって、よいプレッシャーになっており、自分たちがちゃんと役割を果たさないといけないという思いを掻き立て、薬剤師もより全力で患者さんに向き合うようなっていると思います。
そしてそんな全力で患者さんと向き合う薬剤師をみて、PPもまたもっと薬剤師を支援できることはないかと、より全力でサポートするようになる。

このような、ポジティブにお互いに影響し合う存在として、薬局内で協働しています。

薬局内に全力でサポートしてくれる仲間がいてくれることで、薬剤師は全力で患者さんと専門家として向き合っていくことができるんだと思います。

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