【洋服屋の未来②】アパレル販売員は生き残ることができるのか?Part1

アパレル販売員の未来ついて考察します。ニ回に分けてお話します。

Part1の今回は、現在のアパレル販売員についてお話します。

日本の小売店での販売で最も優先されているのは、おもてなし。

「人と話すことが好き」「ファッションが好き」そう言ってアパレル業界の小売の門を叩き、販売員になった人は多いと思います。

長年業界にいると、それは、見た目のカッコ良さ華やかさに惹かれているだけの動機だと感じてしまいます。それを批判することもできますが、不思議なことにに、経験上そんな薄い動機で働きはじめてもソコソコはできるのが、アパレル小売の世界です。

接客用語を身につけ、ブランドの商品についてある程度説明でき、笑顔と体力があれば乗り切ることができます。

いつの頃からか販売員の評価基準として「ロールプレイング」が加わりました。おもてなしの精神で、笑顔や所作、気の利いたフレーズなどを駆使して、限られた時間でお客様を感情的に気分よくさせることで衝動買いを誘発するスキルを磨くことが目的のひとつです。

お買い物に頭を使うのは面倒な人が多いので、理論的なアドバイスよりも感情的に気分よくさせることを大事にしているのです。褒めて嫌がる人はいないと褒めるテクニックを指導するケースもあります。

実際、ささいなことに大きく頭を下げられたり、商品を買ってお見送りされることを嫌っている人は少なくない反面、おもてなしの表現のひとつとして、いまだに多くのブランドショプでそれが続けられています。

結果的に、

・歴史やストリーについて共感を導く
・デザインや色だけでなく素材や縫製の解説
・サイズやフィッティング、補正の提案
・洋服そのものの知識を踏まえてのアドバイス

といった専門的な細かい相談を求められるケースは稀で、それができる販売員は以外にも少ないのが実態です。

具体的には、2つの理由があります。

1.専門的な知識を必要するクロージングウエアよりもカジュアルウエアの市場のほうが大きい。

2.商品力=ブランドネーム(認知度)になっており、専門的な情報やアドバイスはあまり必要とされていない。

余談ですが、いつの間にか、海外ラグジュアリーブランドを除くと、日本にはブランドが違っても同じようなデザインの服が溢れるようになりました。これは、シーズン後余ってしまう在庫が発生することを踏まえて原価率を抑えるためにおきた現象です。消費者に支持されやすい「同じシーズントレンドをなぞったデザイン」の商品をローコストな人工繊維素材を使ってこぞって生産したためです。

ニワトリが先かタマゴが先かの話にはなりますが、メーカーも消費者も、ファッションに難しい哲学やポリシーはいらない時期がつい最近まで続いてきたということです。

販売員は、スペシャリストである必要はなかったということです。

しかし、それはこれまでの話。コロナ禍のあと大きく価値感が変わります。一体どうなるのでしょうか?
続きは次回。

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