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経済成長を支えた制度(Characteristic System supporting Japanese Economy)

日本の経済発展は、長い歴史の中で育った独特の文化を持つ国民性が産業全体を支えていたからだといえます。今まで独特の国民性を発揮することができたのは、多くの国民が仕事に対する昔ながらの姿勢を共有していたからです。独特の成熟した文化の下でみんなが一緒に育ったという背景があったから発揮できたのです。
今に続く忠誠心を持って所属先に尽くしてルールに従い黙々と働き我慢する文化は、江戸時代に私たちのDNAへ刷り込まれました。下地が出来上がっているところに加えて「みんなで一緒に」の教育が日本の成長を支え「Japan as Number 1」といわれるようになったのです。どこへ出しても優るとも劣らない独特の国民性は「みんなで一緒に」の教育でより確かなものとなりました。戦後の奇跡的な復興と高度経済成長は、素晴らしい国民性のおかげで成し遂げられたといっても過言ではありません。
「Japan as Number 1」といわれたころの経済発展の特徴は、次の四つの制度が産業界の慣習として共有されていたことにありました。四つの制度とは1「終身雇用」、2「年功序列賃金」、3「企業内組合」、4「新卒一括採用」です。
 しかし、最近は「終身雇用」の保証を求めない若者が増えてきています。2019年のデータによりますと、新人の3年以内の離職率は高学歴では約30%、義務教育終了学歴では約60%となっています。
「年功序列賃金」も変わってきました。1999年には約8割の企業が年功序列賃金制度を導入していましたが2018年には約6割の企業が役割や職務といった成果に対する賃金制度を導入しています。
「企業内組合」は同じ職場で働く労働者が職種に関係なく団結した組織です。江戸時代に各藩に所属する侍が、殿様の家族のように団結していたのと似ています。明治維新で藩はなくなりましたが、企業ごとに働く者たちは家族のように団結したのです。
大企業の労働者を中心に「企業内組合」は組織されていましたが、組織率は下がってきています。組合の組織率は戦後間もない時期の約5割が最高で、高度経済成長期は約35%になり2022年は約16%で過去最低となっています。もはや働く者が一つの家族のように団結して暮らすという時代ではなくなったようです。
さらに、独特の雇用慣行といわれている毎年4月の「新卒一括採用」は今も続いていますが、最近では通年採用制度を導入している企業が約2割に上っています。
以上の通り、直近の30年間で産業界を取り巻く環境は変わってきていますから、当然のことながら仕事の進め方も変わってきています。変わっていないのは組織を運営する手法です。力に頼る組織の運営手法は江戸時代からあまり変わっていません。
今も多くの組織で行われている力による運営方法は、問題がなかったからという理由で長らく続けているうちに社風となり伝統と呼ばれるようになっています。多くの組織は社風を伝統といって守り続けていますが、合理的な理由がなく単に社風を守り続けるだけでは誇るべき伝統とはいえません。組織に必要なハードとソフトの技術を常時取り入れて、新しい社風へと変わり続ける文化が必要です。変化し続ける社風を伝統とする組織運営の文化を育てなければ後れは取り戻せません。
高度経済成長を支えた「モノつくり」の技術は、今でも世界の最先端を走り続けています。今後も次々と新しい技術が生まれて導入されていくことは違いありません。日本にとって、成長に必要な「モノつくり」の技術を開発し続けることが重要なことは論を待ちません。しかし、車の両輪ともいえると組織の運営という「コトの営み」の技術を「モノつくり」の技術と同じ様に進化させてこなかったことが、現在の3周後れを招いているのです。ハードの技術が常に最先端をめざしているように、ソフトの技術も検証と修正を繰り返しながらアップデートして、一段と成熟した社会の運営をめざす時がきているのです。
最近の報道によりますと、2022年の日本の一人当たりGDPはOECD加盟38か国中の21位です。私たちは踊り場に立って逆風に向かっている状況にあります。現在の社会の運営手法は長く続いた伝統だから守り続けるのが文化だといって、今後も意味もなくただ守り続けるだけではいけません。組織運営の技術の基本を習得し直して、改善し続けていくことが求められています。
さぁ、作業の手順と業務の規則を見直そうではありませんか。

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