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『日露戦争物語』読んで思った事

内容はとても勉強になったし、戦争をセンチメンタルな美談にしてないところ・日本がどうやって大国ロシアに勝ったのか?ではなく、欧米列強の侵略による植民地化に対して、日本がどうやって奴隷になるまいと抗おうとしたのか?そしてその中でどのように日本が間違った方向に舵を切って、日清・日露では勝利するも、最終的にアメリカに敗戦するようになったのか?つまり失敗談として、ペリー来航からつながる欧米との歴史・戦争を見つめなおすってところが非常に良かった。

だけど・・・22巻でこの漫画は打ち切りになったらしい・・・。めちゃくちゃ中途半端に終わってるし、最後の方は背景も雑になってるし、戦争の実態は日清戦争までしか描いてない。

江川達也と日露戦争物語について調べると、出版社とのゴタゴタで最初から誰を主人公にするかとかどうストーリーを構築し描くかという部分で揉めてたらしい。

江川達也さんはもともと教師だったが、一個人として内側から教育を変えることは難しいと気づき、啓蒙するには漫画家になることを決意。しかしまずは人気になって名前が売れないと、誰も読まないだろうから、努力と分析を繰り返し、ヒット作を連発する。自分は漫画詳しくないので知らなかったんですが、めちゃくちゃすごいと思う。

その後自分が本当に描きたかった『日露戦争物語』が始まるが、編集者とのイザコザやストーリーに対しての外部からの苦情、読者離れなどから打ち切りになったようだ。

僕個人的にはすげえもったいねえなぁ!って思っちゃった。戦争をエンターテイメントとして賛美し、誇張した戦闘とか感傷的なストーリーに仕立て上げて読者を高揚させるんではなく、キャラクターひとりひとりの見据えていた思いや、日本の歩むべきだった道に焦点が置かれてるのが素晴らしいと思った。

ただ・・こうして22巻で中途半端になってしまうんだったら、最初から連載漫画としてやらなくてもよかったんじゃないかとは思ってしまう。正直かなり情報が多いし、エンタメ漫画として読むものというよりは歴史をちゃんと学びたい人向けの作品かな。漫画よりも戦争評論・エッセイの形の方がよかったんじゃないかなぁ・・・。まあ当時の出版社との問題とかあんまわかんないので、あまり詳しく突っ込めないけど、きっちり完成した日露戦争物語読みたかったなぁ。

でも内容は幕末から明治維新、日清戦争とつながっていく流れと、その中で奮闘した人々が生き生きと描かれていて、素直に上手だなぁって思った。しかもそれを東アジア(中国・韓国・日本)、欧米列強(イギリス・フランス・ロシア・アメリカ)と絡めながら、全世界の流れに対して、アジアはこう動いてたってのが学べるから、すべてがつながって見えてとても勉強になった。

正直この時代を学ぶなら教科書とかの断片的な情報で学ぶより、この漫画読んだ方がいいですね。

江川達也の『最終戦争論 石原莞爾と宮沢賢治』って漫画もあるのでそれも読みたいと思う。



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