見出し画像

<あんこ の うんこ/中編-3>

海で成長する天然たい焼き

次々と子天然たい焼きは、川の流れに乗り海に向かいます。それはもう次々と。すでにたい焼きらしさがあり、ミニたい焼きの様相で巣立っていきます。

画像1

海に出てからの子天然たい焼きは、プランクトンや海藻などを食べ、大きくなっていきます。常にエサを探して泳ぎ回るので、身体も鍛えられ、引き締まったたい焼きに。大体2-3ヵ月で成長期まで育ちます。

画像2

子ども期あたりから食べる物が、プランクトンや海藻から小エビや小タコなど、小さな海洋生物に変わります。成長期になると、大きめのエサも食べるようになり、カニや貝、時にはウニも食べます。海藻も食べますが、大きさと量が幼児期と比べると5-10倍に膨れ上がり、身体の成長に合わせて増える時期です。

画像3

食べた物を「あんこ」に変える

天然たい焼きは、海にある様々な物を食べて大きなっていきます。それらは全て、天然たい焼きの身体の各臓器が連携して、天然たい焼きの身体を構成する「あんこ・糖・小麦」に変換されるのです。

画像4

◎目/何もないように見えますが、海水から本来の目を守るために小麦の皮が薄く付いています。薄皮越しで物を見るため、天然たい焼きは明るい場所や昼間を中心に動いていると言われています。

◎口/貝やカニなど、硬めの食べ物も噛み砕くため、顎が強く、唇が厚めにできています。

◎鰓/口から入ってくる海水を外に出す機能があります。海水に含まれた酸素を取り込む役目があり、天然たい焼きが海の中で呼吸するための大事な器官です。

◎餡心臓/全身に溶きこし餡を送るためのポンプの役目。1分間に100回ほどの膨張・縮小を繰り返し、身体の隅々まで行き渡るように動いています。

◎餡肝臓/天然たい焼きの中に取り込まれた物の中から、有害な物を取り除く機能があります。あんこ成分にならない要素を選別して身体の外に排出されやすいものに変換しています。

◎餡脾臓/身体の中を巡る「溶きこし餡」をつくっています。流れ続け古くなった溶きこし餡を分解し、新たな餡成分を加え、再生する能力もあります。

◎餡糞/古くなった餡やあんこ成分にならないものが混じっているものです。基本は小麦や糖も入っていますが、時に小麦と糖ばかりの白い餡糞が出る場合がありますが、理由はまだ解き明かされていません。成長期に見られる現象のため、脱皮の代わりではないかと言われています。

◎餡肛門/餡糞を身体外へ排出するための器官です。元々穴の空いた部分のため、天然たい焼きが焼かれた時に、この部分から餡が飛び出しがちになります。

◎餡腸/胃で溶かされた食べ物から栄養を吸収しつつ、分解された成分をあんこ成分に再構成します。同時に身体の中で古くなった餡を肛門近くに集約し、あんこ成分にならないものと混ぜる機能もあります。

◎浮袋/鰓から吸収した酸素を浮袋に流し込むことで、浮かび上がるための袋。浮き輪のような役割を果たします。

◎尾びれ/天然たい焼きは、尾びれまで餡骨がしっかり伸びており、「天然たい焼きは、尻尾まであんこが詰まっている」と言われる由縁です。

◎餡骨/天然たい焼きの身体を支える重要な骨。硬めの餡だが、少し水分を含んでおり、しなやかに曲がるようになっています。身体をくねらせて泳いで行けるのは、餡骨が硬さとしなやかさがあるからです。

◎餡腎臓/溶きこし餡は、餡腎臓を通り、中で濾過されて不純物や老廃物とこし餡に分けられます。濾過された不純物や老廃物は餡腸の肛門近くに運ばれ、餡糞の中に混じって、身体の外に排出されます。

◎餡胃/食べられた物をドロドロに溶かします。成分になるまで溶かされ、腸を通り、餡づくりに必要な成分を吸収しやすいようにしています。餡胃液はどろっとしており、見た目はおしるこのようですが、カニの殻も貝の殻もウニのトゲも溶かしてしまう強烈な液です。見た目に騙されてはいけません。

◎餡脳/全て餡で構成されているが、身体の器官に命令を出している重要な役割を担っています。餡脳を動かすのに必要な栄養は糖だけ。そのため、天然たい焼きの中で一番甘い場所でもあります。


…中編-4 に続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?