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人間が道徳的な行いをする4つの理由 《目安時間3分》

 人間が道徳的な行ないをすることには4つの理由があります。

1.血縁利他主義

 わたしたちは自分の血縁者を優遇する習性があります。自分と血縁関係にある人は、自分と同じ遺伝子を持っているので、血縁者を優遇することは、自分の遺伝子を後世に残すことに繋がります。この習性は自分の遺伝子を持つ個体を生き残らせるための本能ともいえます。つまり、わたしたちは密接な血縁者ほど、世話をし、防衛し、資源を分かち合い、危険を警告し、あるいはその他の利他的行動を示すようになるのです。

 このように血縁者を優遇する利他的行動は、道徳的な行ないといえるでしょう。

2.互恵的利他主義

・背中を掻いてあげるから、あとで背中を掻いてちょうだい
・今夜の飲み代は奢ってあげるから、自分を敬ってちょうだい
・募金をするから、自分を褒めてちょうだい 

「何かしてあげるから、お返しに何かしてちょうだい」という思考に基づく道徳的な行ないは互恵的利他行動にあたります。互恵とはお互いに利益や恩恵を与え合うことです。

 一見ずるがしこいようにもみえますが、この考え方は人間のあらゆる交易や物々交換の基盤になっています。人間は見返りを求める互恵的利他行動をとることで、ここまで大きな文明を築くことができたといえるでしょう。お金という概念が生まれたことも互恵的利他主義があったからです。

 この場合の道徳的な行ないは、見返りを求める道徳的な行ないといえるでしょう。

3.評判を気にした道徳的な行ない

 互恵的利他主義と少し似ていますが、わたしたちは集団における自分の社会的価値を上げるために道徳的な行ないをすることがあります。

 たとえば気前よく奢ってくれる人と、絶対に奢ってくれない人がいた場合、あなたはどちらの人に価値を感じますか?

 ほとんどの人は気前よく奢ってくれる人に価値を感じることでしょう。自分の社会的価値を上げるために気前よく奢る人は評判を気にした道徳的な行ないをしているといえます。

4.衝動による道徳的な行ない

 コンビニの募金箱にこっそり寄付する、という場合はいままでに挙げた道徳的な行ないでは説明することができません。血縁利他主義でもなければ、見返りを求める互恵的利他主義でもありません。こっそり寄付をしているので評判を気にした道徳的な行ないでもありません。このような場合の道徳的な行ないは、抑えられない衝動による道徳的な行ないです。ルソーはこれを憐憫の情と表現しました。

 衝動による道徳的な行ないは、性欲と似ています。本来わたしたちは繁殖をするために生殖行動を行ないますが、それにも関わらず多くの人は、子供をつくることができない異性(アニメキャラクターや妊婦など)を見たときでも性欲が湧くことを抑えることができません。

 それと同じで、多くの人は困っている人をみたときに同情や憐みの感情を抑えることができなくなるのです。たとえば、『感染症に苦しむアフリカの子供たち』というドキュメンタリー映画を見終わった後、映画館の外で「感染症に苦しむアフリカの子供たちのために募金をお願いします!」とアフリカの子供たちが募金箱を持って立っていたら、同情や憐みの感情を抑えることができずに1000円くらい募金してしまいそうですよね。

 このときの募金する心は見返りを求めているわけではなく、周りの人からの評判を気にしているわけでもありません。これが衝動による道徳的な行ないです。こういった衝動による道徳的な行ないは、人類みな兄弟的な思考による血縁利他主義と言えるかもしれませんね。

まとめ

 いままでに挙げた道徳的行動は以下のように換言することができます。

血縁利他主義→種の繁栄を目的とした道徳的な行い
互恵的利他主義→見返りを期待する道徳的な行い
評判を気にした道徳的行い→自分の評判を上げるための道徳的な行い
衝動による道徳的な行ない→大規模な血縁利他主義

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