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ショートショート【不定期更新】

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気まぐれに書いたショートショートを不定期更新していきます。
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#小説

愛撫

愛撫

大きなお風呂の壁一面。
シャボン玉が、赤、黄、青、橙、紫、緑、藍。
ふう、と吹けば、ふるりと揺れた。
触れればつるりところがった。
ただよう湯気に揺蕩った。
ぴちゃり、ぽちゃり、ちゃぷん、とぷん。
耳の奥でパチンと弾けてなくなった。

理由

理由

目の前に箱があった。
気になって開けてみたらあっというまに真っ暗になった。
もうどうにもするすべがなかった。
また開いたときはだれかがのぞきこんできた。
その青年を見たときは女性とまちがえるほどやさしい顔であった。
名を水木といって屋敷へ入れてくれた。
かれのごはんはどれもやさしい味で、身を清めてくれた手も天女のようにやさしくて。
どうしてこんなにやさしいの。
ふしぎに思ってみたら、お気に入りだか

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籠(ショートショート)

籠(ショートショート)

お目覚めかい。じゃあこちらにおいで。
「ここはどこですか。」
お屋敷だよ。ある方の。さあ、ご主人がお待ちだよ。礼儀正しくするんだよ。
「では、しつれいいたします。」

お前、名は。
「Aといいますごしゅじんさま。」
若旦那。
「は、」
そう呼びなさい。
「はい。」
こっちへおいで。
「はい。」
もっと近くへ。
「ですが若旦那が気分を害します。」
かまわない。顔をみたい。
「でしたらなおさら、」

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