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小さな革命を起こす最初の一歩、最初の一冊

過去に四冊の雑誌を創刊し、百冊以上の本を編集発行してきた。そんな出版の最前線に立つぼくがひしひしと感じるのは、素晴らしい本が売れない、読まれなければならない本がまったく売れない、言葉がどんどん衰弱していく、日本語がいよいよ劣化していくということだった。次第にぼくのなかで次のような変革のコンセプトを懐胎していくようになる。

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この視点にたって創刊される草の葉ライブラリーは、たった数部しか売れない本に果敢に取り組み、独自の方式で読書社会に放っていく。荒廃していくばかりの読書社会に新たな生命の樹を打ち立てる本である。閉塞の世界を転覆させんとする力動をもった本である。地下水脈となって永遠に読み継がれていく本である。これら数部しか売れない本を読書社会に送り出していくには、数部しか売れない本を発行していくシステムを確立しなければならないが、これは簡単なことだ。その制作のシステムを旧時代に引き戻せばいいのだ。グーテンベルグが開発した活版印刷が登場する以前の時代の本づくりに。

旧時代の本とは手書きだった。手書きで書かれた紙片を綴じて一冊の書物とした。その書物を人がまた書き写し、その紙片を束ね、表紙をつけて綴じるともう一冊の書物になった。こうして一冊一冊がその書物を所望する人に配布されていった。この手法ならば売れない本を発行するシステムが確立できる。作家たちが膨大な時間とエネルギーを投じて仕上げた作品を、コンピューターに打ち込み、スクリーンに現れる電子文字を編集レイアウトして、プリンターでA四紙の裏面に印字する。そして簡易製本機で一冊の本に仕立てる。その工程はすべて手作りである。その一冊一冊が工芸品を作り上げていくかのように制作されていく。そしてその本を注文した購読者に送付されていく。

大量印刷技術によって、採算をとる経済によって、多層なる販売流通によって、売れる本しか刊行しない、売れる本しか刊行できない現代の出版のシステムに反逆する、古代的な手づくり工法によって、真の価値をもった作品が新たな生命力を吹きこまれて一冊の本となって誕生する。そして二十一世紀の初頭、アメリカに誕生したクラウド・ファンディングによって、その本を真に欲している人に手渡していくのである。

そして「note」の書き手たちにも、次のような挑戦のメッセージも書き込んだ。

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「だれにでも本が作れる、だれにでも本が発行できる、だれにでも出版社がつくれる」。しかしこの革命を起こすには仲間がいる。少なくとも百人の仲間が必要だ。「note」には何十万人という書き手がいる。本にしたい、本にして読書社会に投じたい願望する人は何万人といる。百人の仲間をつくることは絵空事ではない。

この運動に参戦した方は、一年以内に自分の本を出版すると決断するだろう。小説やエッセイ集ならば四百字詰めの原稿用紙で四百枚、その分量の文章を書きあげる。写真とエッセイで組み立てるフォート・エッセイ集ならば、百枚の原稿、そして何千枚と撮られた写真のなかからセレクトされた数十点の写真。写真集や画集ならば一週間で完成する。しかし問題はその内実である。その本が読者の心に響き、読者の魂までに届いていくには火の格闘が必要である。創造は火の格闘から生まれていくのだ。こうして一年以内にこの運動に参戦した百人が、どっと一斉に本を刊行する。大きな文芸運藤が生起する。ここに令和の時代にルネサンスが起る。ぼくたちは革命家としてこの地上に立ったことになる。

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小さな革命を起こす最初の一歩、最初の一冊が、間もなくクラウドドファンデングに投じられる。

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