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廣瀬さんの魂を一瞬にして捕らえたスタシスとは何者なのだ

廣瀬さんはスタシスの絵本と出会ったときのことをこう書いている。
《そんな時、スタシスの絵本と出逢いました。その瞬間、私の体は熱くなり、頭の中が震えはじめたのでした。スタシスの描く幻想的でシュールな絵柄は、すぐに私を虜にしたのです。彼の描く人の眼がジーッと私を見据えます。静かで、暗く、重く、内向的なのに‥‥。眼が素直に優しく私を見つめるのです。その眼はいつかどこかで出逢った優しく無垢な眼なのです。たぶんそれは汚れを知らない赤子のものであるし、動物のそれと酷似しているのです。
寂しく、憂うつな色調の中に妙に救われる誠実な想いがそこにありました。どの絵を観ても無表情で暗い。しかし、眼だけは優しく慈愛に満ちて語りかけてくれるのです》

2019年9月から11月まで武蔵野美術大学の美術館で大規模なスタシス・エイドリゲヴィチウスの展覧会が行われた。日本ではほとんど知られていないスタシスという芸術家の全貌を知るために、そのとき刊行された図録から、一部を転載させてください。

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リトアニア出身で、現代ポーランドを代表するアーティスト、スタシス・エイドリゲヴィチウス(1949 − )は、絵画、版画、挿絵、彫刻、写真、舞台など多方面で制作活動を展開し、国際的に活躍してきました。

見どころ
Ⅰ 窓の向こう スタシスの創造の原点である故郷リトアニアの地で生まれ育った頃の「記憶」。そこには、社会的不安のなかにありながらも、美しくあり続けた故郷の風景と家族の姿が存在し、その記憶はスタシスの世界観を読み解くキーワードとなっています。

Ⅱ 紙の上の対話 スタシスにとって、ドローイングは記憶をとどめたり、蘇らせたりする上で、大切なツールです。日常のあらゆる事象の「記憶」が表出されたドローイングは、すべての制作の端緒であり、スタシスが何を思考し、記憶に留めようとしているのかが現れています。

Ⅲ フェイスあるいはマスク 「フェイス/マスク」はこれまでスタシスが描いてきた一貫したテーマです。空想の世界や見たことのない情景を描きだすなかで、顔は心情を表現する重要なモチーフであり、人間の内面を表すメタファーとして現れます。

Ⅳ イメージと言葉 イメージと言葉とが共生する絵本の創作においても、その物語のなかでスタシスは独自の解釈に基づいた表現を展開しています。

Ⅴ 遍歴する身体 身体表現への展開は、独創的な発想で創作領域を自在に広げていくスタシスの創造力を象徴しています。人間のあり方や世の中のあり様を一つのメタファーとして語ってきたスタシスは、直接的な身体表現の可能性に惹かれ、記憶をめぐる新たな表現の場を見出します。

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とのしないきして




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