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東京映画館旅行記 2024秋

2023年1月以来の東京映画館巡りです。今回は「なるべく行ったことない映画館で見る」「舞台挨拶やトークショー付きの作品を1つは見る」という二つの目標を立てました。

9/4(水)

池袋シネマ・ロサ『侍タイムスリッパー』

2スクリーンのミニシアター。この映画館が入っているビルはゲーセン、飲食店、TSUTAYAと色々なアミューズメントが揃っており、建物に入った途端にディノスシネマズ札幌劇場が入っていたスガイディノスビルを思い出して泣きそうになってしまいました。

見た映画は『侍タイムスリッパー』という作品
今口コミで話題を呼んでいる作品で、舞台挨拶とサービスデーが重なっているのもあったのか、平日の夜にも関わらず満席でした。
ちょうど私が見た日は全国での拡大上映の報が入った日でもあり、舞台挨拶ではそれを受けてキャストの方々が感謝を述べるというとても感動的なものになっていました。運が良かった。

映画自体は面白く、拡大公開前なので詳細を語る事はしません。ただ満席の映画館だとどっと笑いが起こるシーンが多くて、この感覚がものすごく懐かしかったという事は伝えておきたいです。

9/5(木)

ユーロスペース 「ギヨーム・ブラックの夏『リンダとイリナ』

私が推していた元乃木坂46の清宮レイさんがInstagramでギヨーム・ブラックの『宝島』を見て「最高だった」とストーリーを更新されていたので、行きたいなとは思っていたものの『宝島』は時間が合わず、しょうがなく同じギヨーム・ブラック特集上映の『リンダとイリナ』を見ることにしました。

客は3人だけ。上映前、学校の授業開始を知らせるベルみたいな音で予告編が始まる。ここで驚いたというか気付かされたのが、シアターキノで上映前に流れているマナーCMと同じものが流れており、てっきりキノオリジナルCMだと思ってたので、気づきを得た反面少し残念に気持ちになった。

『リンダとイリナ』は質感がものすごくリアルで、なんでこんなにも現実的な青春を写し取れるのだろうと思っていたら、鑑賞後にドキュメンタリーだったことを知って驚く。じゃあ何故こんなに現実をドラマティックに描けるのか、という逆の問いが生まれました。

Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』

元々東急本店に隣接する複合施設の中にありましたが、現在は改装工事中とのことで旧渋谷TOEIの跡地に期間限定?でオープンしているそうです。

雰囲気がバチクソオシャレ。それだけあってか客層は年配層の客が9割以上を占めており、多分自分が一番若かったです。知り合いと遭遇して話し込んでるマダムや、クレームを入れてるマダムなど、色々な人がいました。

タルトタタン(¥500)

タルトタタンをお供にフレデリック・ワイズマン監督の新作を鑑賞。
所々ダレる所はありつつも4時間という長尺を見せ切るワイズマンも流石ですが、椅子が悪くないので鑑賞中に痛さを感じることが無かった。設備も全然悪くないし、好感を持てる映画館でした。

テアトル新宿『ゴミ屑と花』『ユウジッ!!』

テアトル新宿で毎年開催されている田辺・弁慶映画祭セレクション上映。その中の一本である『ゴミ屑と花』を鑑賞。

テアトル新宿は去年『ケイコ 目を澄ませて』を見に来てるので2年連続の訪問。1シアターしかない分こじんまりしていますが、落ち着いた雰囲気でとても好きな映画館です。でもインディーズ映画特有の映画館のロビーで関係者同士が出会って会釈や挨拶をしあうのは、一般観客が疎外感を覚えるので若干苦手です。裏でやってほしい。

この日は上映後に今作の監督の大黒友也監督と『ディアーディアー』の菊池健雄監督、俳優の染谷将太のトークイベントが開催。そのせいもあってか、木曜のレイトショーにも関わらず満員。こういう映画に人が入る東京が羨ましい。

上映前 キャスト陣による舞台挨拶
トークイベント後のフォトセッション

『ゴミ屑と花』は傑作だと思いました。狭い世界ながら社会問題も描き、そしてその問題が決して薄っぺらいものではなくしっかり力強いドラマに昇華させられている。朝焼けの風景に素晴らしく感動する、規模は小さいながらも射程の長いロードムービーでした。

トークイベントはタメになる話ばかりで、この3人の馴れ初め、今作のとあるシーンが実は偶然撮れたものという話(この話題で「『ゴミ屑と花』は濱口竜介の『PASSION』と似た奇跡を起こした作品だなー」と思わされる)や、菊池監督による大黒監督の演出のクセの話、染谷さんは大黒監督の次回作に出るのか否か、みたいな話など充実しすぎている時間でした。

都会の羨ましい点は、インディーズの邦画は舞台挨拶やトークショーと言ったものが頻繁に行われている所。特にトークショーは、作品に関係のないけど出演者やスタッフと関わりのある監督や役者が登壇したり、そういう話を聞けるのは非常に羨ましいなと今回思いました。良いなぁ。

9/6(金)

シネマカリテ『ナミビアの砂漠』

本当は別の映画を見ようと思っていたのですが、座ろうとしてた席が埋まっていたので、仕方なくTOHOシネマズすすきのでも上映している今作を鑑賞しました。
カリテでの映画鑑賞は2019年の8月に見た、カリコレの『4×4 殺人四駆』以来です。

『ナミビアの砂漠』展示物①
『ナミビアの砂漠』展示物②

金曜初日、客は8割近く入っていました。流石都会。作品の期待度の高さも窺い知れます。こちらの映画館もユーロスペース同様に授業開始みたいなベルがなり、そしてシアターキノみたいな注意事項を知らせる上映前のアナウンスが流れていました。
疲れもあってか、河合優実の演技のみが印象に残り、作品の内容は全く頭が入ってきませんでした。ぼーっと眺めているだけのような感じで、結果寝ませんでしたが何回かウトウト。TOHOシネマズすすきのでもう一回見ることにします。

今作のTシャツが限定生産されており、シネマカリテにも販売されていたので購入。嬉しいなーなんて思っていたら、TOHOシネマズすすきのでも販売されているらしくがっかり。

ちなみにスガラムルディという札幌の映画フリーペーパーも設置してありました。
途端に札幌を感じられてなんだか安心しました。ありがとうスガラムルディ。

109シネマズプレミアム新宿『ラストマイル』

昨年4月にオープンした東急歌舞伎町タワーの中に構えている映画館。
この映画館が今回の映画館巡りで一番楽しみだったと言っても過言ではありません。

なんと鑑賞料金がCLASS Aで4500円、CLASS Sで6500円という破格の値段。毎回行ってたら破産するでしょう。富裕層でない限り、普段使いは期待できない映画館です。
そして今回はCLASS Aに座りました。せっかく来たので本当はCLASS Sに座りたかったのですが、鑑賞後にラウンジで余韻に浸りながらくつろげるという特典が時間合わず受けられそうにもなかったのと、出口から遠かったので諦めました。

先に結論から述べると、4500円払う価値は多分にありました。すごく快適だったからです。

上映の1時間前からロビーで待機することができます。まず入場すると、ウェルカムコンセッションがあり、そこでポップコーンとドリンクを無料で頂けます(鑑賞料にこの代金も入っているので、無料という言い方は正しくないかも)。おかわり自由なのでポップコーン好きな人は上映前に1杯、開場したらもう1杯、的な使い方もできるでしょう。

キャラメルポップコーンMサイズ&ドリンク

ポップコーンが好きではないのでそんなに食わないのですが、ここのポップコーンはまあまあ美味しかったと思います。厚手のウェットティッシュが用意されているのも◎。

見たのは『ラストマイル』。見たい映画がそこまで無かったので、札幌でも見る機会がありましたが、わざわざこの日のために2週間ほど我慢。その間に『アンナチュラル』も全話予習できたので結果は良かった。

シアター内の座席

まず客入り。大ヒットしてる映画&新宿歌舞伎町の映画館という要素があるにも関わらず、客は10人ほど。この映画館最大の魅力はここでしょう。そもそも高い金払って見に来てるんだからスマホいじり、おしゃべりなどマナー違反する客は来ないと考えられるので、快適に見られる。単価が高いから、人が少なくても罪悪感に囚われない。案の定、マナーの良い客が揃っており、話し声は一つも聞こえてきませんてました。

この豪華な座席。CLASS Aでも十分です。
座席は可動式で、前から2列目での鑑賞にも関わらず快適に見られました。むしろスクリーンが大きく感じられて、迫力が増すので前方が良いかもしれません。傘置き場も完備。

あとこのシアターの良い所は、スクリーンがでかいのにも関わらずビスタサイズな点です。
札幌のでかいスクリーンは漏れなくシネスコで、ビスタサイズのスクリーンは大体小さい。そんな中で体感するビスタの大スクリーンはIMAXを思わせる迫力でした。没入度が異様に高かったです。

音響の面は、今は亡き坂本龍一氏が監修した「SAION -SR EDITION-」というのが全シアターに導入されています。上映前のCMでは、坂本龍一がシアターに込めた思いが紹介されていました。
実際『ラストマイル』では爆発シーンが多いのですが、爆風の音に包み込まれるような感覚がありました。

映画は別にそこまで面白く無かったです。『アンナチュラル』や『MIU404』は一話完結で事件の真相を一つの感動的なドラマに仕上げて、さらにそこから縦軸でドラマ全体がつながっていく綺麗な構成に目を見張るものがありましたが、映画というフォーマットとなると真相パートは副産物的なものでドラマとしては全く心が動かされるものではなく、主役2人のドラマに徹していることで、物足りなさを感じました。顔見せ的な同ユニバース出演者登場も要らなかったです。

そんなハマらなかった映画でも、一生覚えているような特別な体験にしてくれるのかこの映画館。お値段が張るので普段使いはできませんが、自分が楽しみにしている映画やご褒美、友達やデートで来るのに最適な映画館だなと思いました。
いやー、こうして振り返っているうちにまた行きたくなってきました。高いのに中毒性があり、それくらい映画を楽しむのに特化した映画館と言えます。東京へ行った地方の映画好きは絶対に行って損はないです。自分史上1番の映画体験だったと断言しましょう。
今度公開の『憐れみの3章』は日本で唯一35mmフィルムで上映するとのこと。行きてえな。

総括

今回の映画館巡りではまだ心残りもあります。「バルト9のミッドナイト上映を見て始発で帰る」「池袋のScreenX with Dolby Atmosを体験する」「立川シネマシティの極上音響上映を体感する」など、とてもじゃないけどやり残したことが多い。
今回で東京を卒業して、そろそろ大阪とか愛知県に行きたいなんて行く前は思ってましたが、東京の映画館をすべて制覇するまではずっと東京に憧憬の念を抱くのだと容易に想像できます。

そして、映画と観客の距離の近さを感じた今回の旅行でしたし、「この映画にここまで人が入るなんて、映画好きな人多いな〜!」という札幌では感じられない気持ちになったのも嬉しかったです。

旅行先での映画館巡りは本当に楽しいので、映画好きの皆さんもぜひ。

バルト9のスケジュール表。心残り①

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