現代俳句 作品集 1 〜この星〜
「 この星 」
~現代俳句集〜
家二軒ひびきあうかにふうりんよ
むこうにはあおぞらだけよ扇風機
わざそしてこころ次々にぎり寿司
ときが来ていっせいに赤トマト畑
父の日よ大黒ばしらという御菓子
探査機たちはしる火星は涼しいか
うちゅうにもある物語ふうりんよ
じぶんの名となえてもみよ街に虹
わすれられわすれこの世は大夕焼
月というこころの涼のおおきさよ
邪馬台国ほたる今宵も舞いだすか
あおぎ見てつなかっている夏の星
◇
この街よひとりにひとつ朝焼け空
くだってはのぼるヨットよ荒い波
ろうじんというしずけさが蝿叩く
剪らずおけ月日の果ての濃紫陽花
渋滞かどこまでもどこまでも梅雨
夜は明けるものよこおりと焼酎と
アメリカンバーガー夏の飛行機雲
ちちおやも子どももコーラ夏休み
すずしさのみちまっすぐよ大鳥居
椰子のいろまた海のいろソーダ水
飛びたったてんとうむしが大空か
子はねがい父母はいのって夏の星
◇
ひとびとは時代そのもの生ビール
アルバムの最後のページやがて秋
神話いきいき民話いきいき祭の夜
恋をして恋のはなしよ手まり寿司
押し寿司よ祝いのことばただ一言
噴水よ日々つくづくとそらのした
白扇よだいじにつかうこのからだ
家いえのはしらになる木なつの空
なつのつき交番しんとあってこそ
ふるさとの夜はあかるくて月見草
じぶんの時間じぶんに流れ衣更え
生きているひとみな強者冷やっこ
◇
百日紅とおくを見よということか
ふうりんよ話しはるばる時代越え
八雲立ついずも八重がき虹ふたえ
アマノイワト大しめ縄の涼しさよ
ヨモツヒラサカ大岩どかと苔の花
たくさんの神たくさんのくもの峰
ほととぎすまたほととぎす湧ヶ淵
火の歴史明るく暗くキャンプの夜
はるばるとまたちかぢかと蛍とぶ
うそひとつふたつみっつと蟻地獄
アイスティー氷からんと静かさよ
医師がいてしずかな島よ蝉しぐれ
◇
むぎわら帽子色あせてゆく毎日よ
ちんもくがただながながと蟻の列
明あかとあけてゆく世の赤富士か
かみなりよポポととびだす鳩時計
漕ぎだして恋のボートよ星のなか
汗だくの世のまんなかに浄土寺よ
げきどうの世のしずかさよ大夕焼
よいひとによい音たてて手花火よ
扇風機暮れてゆく部屋あかあかと
この星よがらがらくずれゆく氷河
冷蔵庫じかんとまっていることよ
目にあかくこころにしろく蓮の花
6月18日〜7月16日
発表日順
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