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現代俳句 作品集 1 〜この星〜


「 この星 」
~現代俳句集〜

家二軒ひびきあうかにふうりんよ

むこうにはあおぞらだけよ扇風機

わざそしてこころ次々にぎり寿司

ときが来ていっせいに赤トマト畑

父の日よ大黒ばしらという御菓子

探査機たちはしる火星は涼しいか

うちゅうにもある物語ふうりんよ

じぶんの名となえてもみよ街に虹

わすれられわすれこの世は大夕焼

月というこころの涼のおおきさよ

邪馬台国ほたる今宵も舞いだすか

あおぎ見てつなかっている夏の星


この街よひとりにひとつ朝焼け空

くだってはのぼるヨットよ荒い波

ろうじんというしずけさが蝿叩く

剪らずおけ月日の果ての濃紫陽花

渋滞かどこまでもどこまでも梅雨

夜は明けるものよこおりと焼酎と

アメリカンバーガー夏の飛行機雲

ちちおやも子どももコーラ夏休み

すずしさのみちまっすぐよ大鳥居

椰子のいろまた海のいろソーダ水

飛びたったてんとうむしが大空か

子はねがい父母はいのって夏の星


ひとびとは時代そのもの生ビール

アルバムの最後のページやがて秋

神話いきいき民話いきいき祭の夜

恋をして恋のはなしよ手まり寿司

押し寿司よ祝いのことばただ一言

噴水よ日々つくづくとそらのした

白扇よだいじにつかうこのからだ

家いえのはしらになる木なつの空

なつのつき交番しんとあってこそ

ふるさとの夜はあかるくて月見草

じぶんの時間じぶんに流れ衣更え

生きているひとみな強者冷やっこ


百日紅とおくを見よということか

ふうりんよ話しはるばる時代越え

八雲立ついずも八重がき虹ふたえ

アマノイワト大しめ縄の涼しさよ

ヨモツヒラサカ大岩どかと苔の花

たくさんの神たくさんのくもの峰

ほととぎすまたほととぎす湧ヶ淵

火の歴史明るく暗くキャンプの夜

はるばるとまたちかぢかと蛍とぶ

うそひとつふたつみっつと蟻地獄

アイスティー氷からんと静かさよ

医師がいてしずかな島よ蝉しぐれ


むぎわら帽子色あせてゆく毎日よ

ちんもくがただながながと蟻の列

明あかとあけてゆく世の赤富士か

かみなりよポポととびだす鳩時計

漕ぎだして恋のボートよ星のなか

汗だくの世のまんなかに浄土寺よ

げきどうの世のしずかさよ大夕焼

よいひとによい音たてて手花火よ

扇風機暮れてゆく部屋あかあかと

この星よがらがらくずれゆく氷河

冷蔵庫じかんとまっていることよ

目にあかくこころにしろく蓮の花


6月18日〜7月16日
発表日順


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