韓国ワーホリ生活 21
少し時系列が戻るが、J-STATIONでアルバイトしていた女の子の一人チニョンは寒くなる頃に辞めた。
寒くなっても、軽めのコートに足はビーチサンダルを履いていた。自分の意思を強く持っていて個性的で格好いい女性だった。
チニョンが辞めた後に、イテウォンのバーでアルバイトしていたので行ってみた事があった。イテウォンは外国人街というイメージで危ないって話を聞いていた場所だ。一度先生達とカフェバーみたいな所に行った事があった。
チニョンに会いに行こうと思って一人で行ってみた。
勝手に遠いもんだと思ってたけど、シンチョンから結構近いんだなと思った。ちょっと駅前の大通りをうろうろ歩いてから、店に入った。
店は広くて、外国人向けのパブみたいな感じだった。日本でいうとHUBみたいな。真ん中のカウンターで飲み物貰って各々好きなとこで飲むスタイル。
そういう店に普段行かないので、自分を持て余しながらカウンターの前に座ってチニョンとしゃべった。店員はみな韓国人で、欧米ノリになっていて、テンションが高かった。時々ハイタッチしているのを見て気後れした。
チニョンが、最近こっちに出張で来ている日本人の常連さんがいるから来たら話すといいよ、と言うので待つともなく待った。
現れたおじさんは、エンジニアで来てる人だった。根暗な感じで話す内容もネガティブだった。しばらくそのおじさんと話した。あまり盛り上がらなくて正直辛かった。チニョンの野郎めと思った。
おじさんが帰って、僕もお腹いっぱいだし、緊張で酔っぱらってきたし帰る事にした。
帰る時にチニョンが肉厚でジューシーなハンバーガーをお土産で包んでくれた。
ちゃんと話せなかったなと、不完全燃焼感を抱えて地下鉄に揺られた。
乗り換えるのが面倒なので、ソガンデ駅で降りて歩いて帰った。
(ソガンデ駅はシンチョンのすぐ隣で、ソガン大学前にある駅。韓国語のデは大。)
帰ってからJ-STATIONの前の道端で花子にその日の事を話した。
お腹が一杯だったので、花子にハンバーガーをあげたら随分喜んでいた。
チャ先生もJ-STATIONのアルバイトを辞めていた
チャが近くのバーというかスナック的な所でアルバイトをしていて、時々迎えに行った。大体の場合、行くと随分酔っぱらっていた。
こんなバイトしたくないと帰り道でわーわー泣いている事もあった。水商売が嫌なようだった。尻の軽い女なのに。
一度だけ印象的だった事がある。
店に行くと、チャは酔っぱらっていて、日本語話せる客が来てるからお前も入って飲めという。カウンターに韓国のおじさんが二人座っていた。聞くと一人は貿易会社をやっていて、時々オイドに来る事があるという。僕は自分が何でここにいるのかとか、なぜ韓国にきたのかとか卒業してすぐ就職しなかった事等を話した。その人は、ゆったりした感じで人の話を良く聴いてくれる人だったので僕は結構自分の事を話した。
僕とその人が話している間、チャはその人のボトルを勝手に飲んでいた。普通に客に対して失礼だろと思ったのだが、韓国のシステムはこうなのか?いや違うだろと思いながら話をしていた。
その人が最後に言った言葉が、
僕が偉そうに言うつもりはないのですが、これは覚えておくといいですよ。今、自分がここにいるんだという事をちゃんと理解する事は大事ですよ。
だった。それと、
あと、僕はもうここには来ませんよ。
と優しく言った。ああ、やっぱりチャに、こいつ無いなと思ってたんだなぁ。
その人に言われた事は、その時にズキューンみたいに響いた訳ではないけど、すーっと入ってきて、今でも大切にしている。
何かあった時にしても、無い時にしても事ある毎に思い出す、ありがたい言葉だと思っている。今この時に自分はここにいるという事をしっかりと知る、理解する。
置かれた場所で咲きなさいと似ているような。
その後、チャに聞いたけどその人は来なかったらしい。
チャは1ヵ月位でそのバイトを辞めた。
それから、ホンデの方のゴルフ用品の店のバイト面接に同行した事もあった。一日行って辞めていた。店長が四六時中エロ話をしていたらしい。
それで夜は友達とご飯に行ったり、下心ありきで誘ってくる兄さんと遊んだりしていて、僕は連れていかれたりいかれなかったりしていた。
僕の気分的にも静かに暮らせれば何でもいいやって気分だった。
ある程度、生活スタイルが決まって来た。
お父さんは午前中に起きてご飯を食べる。僕も一緒に食べたりする。内容は、チャが作り置きしたスープとかおかずと、キムチと海苔。ごはん。
お父さんはキムチと海苔とご飯だけあればいい人だった。
それでお父さんが仕事に出かけると、チャが起きてぼちぼち出て行って、僕は一人で皿洗いして、公園を散歩する。という感じだった。
夜になると、お父さんが帰ってきて、居間のソファで一緒にテレビ見たり、一緒にゴミ捨て行ったり犬とたわむれたりした。
お父さんは、お前どうするんだって感じの事をよく言っていた。僕は、チャにお金も貸していたし、貯金でただ帰るまで過ごせるんだけどなと思っていたけど、こっちからは自分の説明をしていなかったし、まーいいかと思っていたので、そうですねぇ~位で過ごしていた。
お父さんは草場の洗った皿はもう一回洗いたくなると言っていた。
娘は帰ってこないけど何してるんだ?お前はそれでいいのか?みたいな事を言うけど、そうですね~と言って一緒にテレビを見ていた。
そしてチャが夜帰ってくると、ビデオチャットにつきっきりだった。
その間は部屋に入れず。お父さんが起きている間も部屋で寝させてもらえず。
大抵、お父さんが寝るとソファで寝ていた。チャの機嫌が良い時は彼女の部屋のベッドで寝た。
犬がソファを占領して、僕が取ろうとすると威嚇された時もあった。
全部が、少しの間の事だからという事で、楽しかった。
夜一人でゴミを出しに行って、しばらく公園で空を見ている事もよくあった。
今、自分はここにいる。という感じで。
つづく。。。
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