残り香
初夏の陽気に汗ばむ額
緑の合間に降る日差し
流れる水のささやきを
聞かずにぼくは歩いてく
きらきら呑気に揺らめく水面
甘い匂いのあめんぼう
今日の小川は穏やかで
水位もあまり高くない
纏わりつく蚊と腫れた指
むず痒くなるあの眼差し
流れる水のささやきを
聞かずにぼくは歩いてく
ちらちら脳裏に揺らめく皆も
青い匂いの甘えんぼう
明日の小川も穏やかで
変わらず流れていくのだろう
今も聞こえるきみの声
初めて交わした挨拶は――
白いレースのカーテンが
微かに湿った風に舞う
流れる水のささやきは
聞かずにきみを思い出す
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