7. 本はインスパイアする! 中村雄二郎 『パトスの知 ―共通感覚的人間像の展開』 筑摩書房 1982
あくまで個人的な事情
筆者は日本語研究を進めるにあたって、日本語学、国語学、言語学、社会言語学などの分野だけでなく、隣接する知的領域にヒントを求めることがある。日本語の情意というテーマを追っていた頃、筆者は哲学者中村雄二郎氏の「パトスの知」、「共通感覚」という概念にめぐり逢った。中村氏は全集としてまとめられている作品を含む膨大な著作で独自の哲学思想の世界を描いており、筆者はなるべく多くを読ませていただいたが、その斬新で繊細、美的で情的な哲学構築の全体像を理解するまでの勉強は