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大人になって読書感想文(5冊目)

〈参考文献〉
三浦佳世・河原純一郎(2019) 美しさと魅力の心理 ミネルヴァ書房

この本は、出演する舞台で演じる役作りのため、と思って探し出しました。

演じる役は、端的に言うと、自分の容姿にたいそう自信のある王子様です。
女性の形容表現になりますが、最近話題になった「あざとかわいい」にも通じるところがあると思いました。

「あざとかわいい」については賛否両論がありますが、私は支持します。明らかに「かわいい」のリアクションを狙ったような行動を進んで、あるいは反射的にできるのは、自分の容姿に自信があるから。そして、自分の容姿に自信を持てるのは、自信を持てるほどの努力をしているからだ、と思っているためです。

つまり、自分の容姿に自信がある人を演じる上では、外面・内面共に、美しいとはどういうことかを理解して実践すべきだと考えました。外面はメイクと衣装と早寝早起きで、内面は本書で、ということです。

本書は、「美とは何か」という問いについて様々なアプローチから考える理論編と、人やものや動作、目に見えないものまで、45項目についての美しさと魅力を考える項目編に分かれています。
これらを人の美しさに関することに絞って要約し、感じたことを述べます。

始めに、ある人が美しいかどうかという問いに対する答え方として、本書では大きく2通りに分けて説明されています。1つは「見られる側の人による」という答え方で、もう1つは「見る側の人による」という答え方です。

ここで、この2つの答え方を示す例として、先日ご結婚された、星野源さんと新垣結衣さんの美男美女夫婦を挙げます。
主に前者の要因で評価されているのが新垣結衣さんで、主に後者の要因で評価されているのが星野源さんだという整理で展開します。

〈新垣結衣さんのかわいさについて〉

「魅力的な人が通り過ぎれば、思わず目を奪われてしまいます。私たちは何が美しいのか、どういうものが魅力的なのかを知っています。しかも多くの場合、こうした評価や感情はほかの人と共有できます。美しさには、共通解あるいは一般性、さらにいえば普遍性があるように思われます。」(p.ⅰ)

新垣結衣さんは、オリコンニュースの「第14回 女性が選ぶ"なりたい顔"ランキング」で第2位に君臨しています。ですから、上に述べたように、「新垣結衣さんはかわいい」という評価は多くの人と共有できます。ただし、新垣さんのどういうところがかわいいのかを話題にしだすと、ファン同士で争いが起きること必至となります。

この点について本書で、専門的知識がいくつか書かれています。

例えば、左右対称だと魅力度が増す「シンメトリー」(p.40)、肌がすべすべであると魅力度が増す「平均顔仮説」(p.74)、平均顔よりも目が大きいと魅力度が増す「幼形化仮説」(p.77)、が挙げられます。これらはいずれも実際の人を相手に、例えばいくつかの顔を見比べてどれが1番魅力的かを評価してもらうような実験の結果として得られた結論です。

つまり、新垣さんがかわいいのは、新垣さん本人に、多くの人が魅力的に感じる特徴が、多数、備わっているためだと考えます。

もっと他にあるだろ、と思いますね。私もそう思います。

〈星野源さんのカッコよさについて〉

2016年後期、日本に魚顔ブームが起こりました。魚顔ってどんな顔?と聞かれても答えに窮しますが、「星野源さんみたいな顔」と言えば、大抵の人が納得してくれるような気がします。

さて、俳優としての星野さんを一躍有名にしたのは、TBSテレビ系「逃げるは恥だが役に立つ」だと思います。この放送期間も、同じく2016年後期でした。魚顔ブーム、ひいては魚顔ブームを牽引したと言ってもいい星野源さんの人気と逃げ恥ブームとの間には因果関係がありそうです。

これは、認知心理学の単純接触効果という現象で説明できると思います。

「その対象が好きでも嫌いでもないようなニュートラルなものであっても、ある対象に触れれば触れるほど好きになっていくという現象を『単純接触効果』と呼びます。」(p.4)

まず、説明のために一部不適切な表現が含まれることをお詫びいたします。星野源さんは大好きです。

まず、逃げ恥ブームによって、平匡さん(星野さんの役名)の株が上がります。次に、平匡さんの評価と星野さん本人の評価がリンクします。そして、星野さんは歌手活動をされていることもありメディアへ出る機会が多いので、一気に注目が集まります。
単純接触効果は、「ニュートラルあるいはややポジティブに感じる対象の場合」(p.4)に発生しやすいので、平匡さんの良いイメージのついた星野さんが多くの目に触れ、多くの人にカッコいいと思われるようになりました。

つまり、星野源さんがカッコいいのは、国民が逃げ恥ブームによって星野さんの魅力を知り、星野さんを見る機会を多く得たため、ということになります。

それだけじゃないだろ、と思いますね。私もそう思います。

新垣さんのかわいさも、星野さんのカッコよさも、いくつかの定説に当てはめただけで語れるものではないということは、実際に当てはめてみてよくわかりました。

特に、星野さんに関しては、魅力について語るつもりが、結果ディスったような形になってしまいました。大変申し訳ありませんでした。

美しさと魅力についてより正確に理解するためには、更なる知識の深掘りが必要です。

この点、本書は50名以上の著名な先生方が共著されていて、それぞれ基礎的な理論が見開き2ページでわかりやすくまとめられています。著者の文献をあたるか、文中の引用元をたどれば各論の深掘りができるので、辞書的な使い方もできる一冊となっています。

美しさについては、その考え方は無数にあり、それらをつなぎ合わせて考えればある程度の答えは出せるけれど、結局はっきりしたことはわからないという、奇妙な概念だなと思いました。

よくわからないなりに、見られる側としてできる限り美しく見せる努力をして、結果的に見てくれる人の目に止まったら、私もいつか、舞台上で美しく輝けるのでしょうか。

私はどこに向かっているのでしょうか。

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