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自分の親が毒かもしれない

・毒親という存在を知る

毒親という言葉を知ったきっかけは、数年前に母親との確執に悩む女性のエッセイ漫画を読んだこと。著者の母親が自分の母親にそっくりな性格だと思った。ただ自分の母親はここまで酷くないから大丈夫、と特に気に留めはしなかった。

元々機能不全家庭で育ったという自覚はあったが、自分の親を酷い人間だとは思っていなかった。至って常識的な普通の親であり、ただ未熟でどうしようもなく自分本位なだけだと思っていた。

・毒親という疑惑

その後機能不全家庭や毒親関連のエッセイ漫画を読む機会が増えたことで、思い当たる節がありすぎて自分の親が毒親かもしれないと思い始め、断定するに至ったのは婚約者との入籍も間近になってのことだった。

結婚の挨拶に来た婚約者のことを

「きちんとした仕事もしているし、良い男じゃないか」

と最初は気に入ったようなことを言っていたのに、よりにもよって向こうの両親への挨拶も済ませた入籍間近になってからこんなことを言い出した。

「やっぱりあいつはダメだ。帰ってくるのも(激務のため)遅いし反対だ。どうせ都合良く使われているんだろう。性格もなんか男らしくない。お前が選ぶ男はいつもダメだ。もっとまともなのはいないのか」

ケチをつけられるのは異性の選択に限ったことではない。というかこれまでの人生の選択全てだ。
毎度飽きもせず、私の決断に対し最初は賛成し褒めるような態度を見せ、後々

「○○の方が良かった。よりにもよってなぜそれを選ぶのか。見る目がない」

というようなケチをつける。述べられる理由は単なる建前であり、気に食わないというのが本音。どう改善しようが今度は違う理由で難癖をつける。
そういう態度には心底辟易しながらもいつものことと慣れ切っていた。

だが結婚となると話は別だ。親が結婚に際して言うべき台詞は「どんな相手を選んでも子供が幸せになるならそれで良い」、祝福を込めてただそれだけ言うものと私は思っていたしそうであると疑いもしなかった。

それが。入籍間近、前述の言葉を投げつけられた。

親の悪態にはもはや動じなくなっていたが、今度の発言には心底驚き、込み上げてくる怒りと悲しみを抑えられなかった。

そもそもケチをつけられるような難のある相手ではない。何なら私には勿体無いような相手だ。

そう、私が手元を離れるのが単純に気に食わないのだ。自分たちより優先されるべきものなどあってたまるかと思っているのだ。

その後親の言うことは全て受け流し、結婚の話を着々と進め、向こうの両親から顔合わせの話が出た。顔合わせするまでにもいざこざがあったが、顔合わせ当日も酷かった。

・剥がれた化けの皮

顔合わせの数日前から私は忙しかった。遠方からわざわざ向こうの両親が来るのだから、家に招かない訳にはいかないだろう。結婚前に同棲していたので、部屋の片付けやらお茶菓子の買い出しやらまともな食器やら、体裁を整える作業に追われていた。

当日も早朝から身支度やら最終チェックやら菓子を焼いたりで忙しく、何かあってもいいように随分早く出るつもりだったが、予定より少し遅れたものの十分に余裕を持って夫とともに家を出た。

会食に選んだ店は駐車場が無く、近所の合同の有料駐車場を利用するタイプだった。ホームページには店に駐車券を持参すると割引になるサービスがあるとの記載があった。

店の名前や場所、実家からのルート、店のホームページ、店に駐車場が無いことと駐車場の場所などはあらかじめ親にメールで送っていた。だが念のため、当日の朝に親切心で「割引サービスあるから駐車券を持ってきて」とメールで伝えたところ、暫くして母から電話が来た。

出たところいきなり怒鳴られた。

「そんなこと当日に言われたって困るわよ、もっと早く言いなさいよ!!
 こっちは余裕持って来てるんだから!!!
 お父さんわざわざ駐車場に取りに行ったわよ!!!!」

ーーいやいや事前にまとめてメールで送ってあっただろうが。読みもせず調べもせず、自分の落ち度を一分も疑うことなく、相手のミスかのように責め立てられる神経が解らない。

いくらホストの立場と言えど、そこまで面倒見る責任は無いだろう。きちんと諸情報を送り、ネット環境もあって事前に調べることはできたはず。情報社会の現代で駐車場の有無やサービスなんて友人に案内したことはないし、各自で調べるのが一般的であり普通の対応だ。

寝不足や疲れに加えて親の理不尽さに苛々しながら店に向かう途中で、婚約者は向こうの両親を迎えに行くためいったん別れ、私は先に店に向かった。
店に着き部屋に通されると、不機嫌さを前面に押し出した母親が窓の外を睨んでいた。父親がまだ戻っていないらしく、戻るまで無言だった。

戻ってきた父親は怒ってはいなかった。
段取りが悪い、事前に伝えておけと愉すように言ってきた。苦笑いしながら。

ーーむしろ事前に調べてこいよ。

怒り絶頂だったが、相手にするだけ無駄と思い、口先だけ謝って後は黙った。苛々した顔を向こうの両親に見せたくないため努めて平静を装いながら。

しばらくして、婚約者とその両親が部屋に入ってきた。婚約者は母の怒鳴り声を車内で聞いていたため、低姿勢で挨拶を始めた。
後は食事しながら適当な話をする流れになったのだが、黙って俯いていた母親がいきなり「あんた(並んでいる料理)食べられる?」などと聞いてきた。

婚約者のお母さんが会話の糸口としてか「確か少食なんでしたっけ? 量が多いですしね」と話しかけてくれた。
(少食ではないが軽い会食恐怖症とでもいうのか、慣れない人との食事はほぼ喉を通らない。結婚前の挨拶の時、たくさん料理を並べられて残してしまうことは避けたかったため、少食と伝えていた)

のだが。母親はにこりともせずこう言った。

「この子好き嫌いが激しくて。食べられるものが少ないんですよ」

(一般的な食材のほとんどは食べられるが、苦手な料理があるというだけ)

そこで会話は途切れた。

あとは父親同士が主に雑談していたが、母親は「(婚約者に対し)仕事ばかりで帰りが遅いのはどうかと思う」というような気分の悪い返答ばかりだったので、一向に空気は和まなかった。
(うちの母親は専業主婦の期間が長く慣れ切った人間と限られたやり取りしかしないため、社会性が未熟で空気が読めない。悪気なく相手の気分を害すような発言をする。しかも本人はそれを「物をはっきり言う」と都合良く解釈しているのでなお悪い)

やり取りは省くが、うちの親の発言を端的に書くとこうだ。

「うちの娘はわがままで本当に手がかかる。なかなか自立しない。出来が悪い

失敗談とかずっと娘のネガティブキャンペーン。
(謙遜するというレベルじゃない)
あとは婚約者の仕事が激務で帰りが遅いことが不満。

場に相応しい話題ではない。何言ってるんだろうか。
わざわざヤバい家であると暗に伝えているようなもの。

それでも一応話は続き、結婚式の話になった。
しかし母親がこれまた

「うちの家系は式と名のつくものが嫌いでして〜。太ったから着ていく服がないし」

などと語るも恥ずかしいようなことを言い出す。

ーー勘弁してくれ。これ以上恥を晒さないでくれ。

もう後半は恥ずかしさで頭が沸騰していたため、朧げにしか覚えていないが、会食が終わり店を出たあと、難しいことから解放されたためか機嫌が治った母親と喋りながら歩いていた。
昔履いていたお気に入りのパンプスが太って履けなくなったと言うので、履けない靴をなぜ捨てないのかと聞いた流れで母親がまたも爆弾発言。

「いつでも(父親と)別れられるように荷物は少なくしてるんだから、これだけは取っておく」

父親と別れる、は母親の口癖で、物心つく前からずっと言っている。身内であればいつもの冗談と思うが、後ろを並んで歩いていた向こうの両親はどう思ったのだろうか。

そして私は、両親がほぼ初対面の人間と話すところを見る機会が無かったことに気づいた。この一件で私は両親の対外的な常識の無さを思い知り、その後確信を深めていくことになる。

・そして確信へ

その後結婚式の話を進めることになったのだが、とんでもない言動が目立つようになる。その話はまた今度。

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