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銀の梅

 もいだばかりの梅を、水を張った大きな鍋に入れ、その産毛が空気を孕んで銀なるを、小さき人が「梅が凍った」と言うのが面白く、続けざまに幾つも入れて、涼を取る。

 すると、また別の人が、水まんじゅうのようだと私見、さらには赤く、黄色く熟れたものの香り良く、この水菓子をなぜ食べられないものかと、不思議に思うようになる。

 そのままでは食べられないものが、なぜこれほどかぐわしいのか、初め、人は梅をそのまま囓ったか、何とか食べられぬものかと悩み抜き、酒や漬け物にしたものか、そのとき小さき人などは、やはり水に浮かべた梅を、凍ったようだと述べただろうか。

 遠い記憶を探りつつ、洗われ、拭かれ、色に大きさにと吟味を重ねられた梅は、桶の底に並べられ、塩を振られ、梅干しへの一歩を踏み出す。

 真夏の日差しに赤くなり、とろりと眠るときを夢見て。

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