見出し画像

山に生えたミョウガを食べる

 ミョウガを食べると物忘れする、という話を、昔話で読みながら、昔話というのは不思議なもの、イモリの黒焼きが惚れ薬だとか、長者の娘の病がヘビのせいだとか、そんな話があるのだからと思いつつ、時の経つこと数十年、山に生えたミョウガを食べる。

 すると、このミョウガの香味のすごいこと、嫌味もないまま脳天へ抜け、後に残る心地よさ、しゃっきり目は冴え頭の冴えて、暑い夏にもしゃんとする、これが物忘れを呼ぶと言われれば、納得というものである。

 これはミョウガに限りはしないが、スーパーで買う野菜など、新鮮なものなどありはしない、山の目にはどれも萎びて見える、ミョウガもその一つであったと、驚き、感心するばかり。

 これを知ったということにするのなら、イモリの黒焼きというものは、真に惚れ薬かもしれないし、娘の病も庭石に挟まれ、苦しむヘビのせいかもしれないと、まったく何も知らないくせに昔話を馬鹿にする人、現代話というほうが、誠に不思議なものかもしれぬ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?