【随筆/まくらのそうし】 幼雀蛾
通常よりも、大きなものが好きな性質らしい。
それで例えばイモムシで言えば、スズメガの幼虫などたまらない。
大きな頭部、ぴんと立った尻尾(のようなもの)、ふっくらとしたその体には、葉脈らしい模様や、蛇の目模様がついていて、眺めるのに飽きが来ない。
一体、中には何が詰まっているものか、そっとつまめば、絹の如く滑らかな肌が、どこかふわふわとした中身の感触を伝えてくる。イモムシにしてはしっかりとした足取りが、手のひらをしっかり踏みしめる。
それを枝に戻して耳を澄ませば、がりがりと、やかましく葉を囓る音、それから唐突に尻からひり出す、我々はイモムシ界のゾウであるぞと言わんばかりの、大きなうんこ。
色はそれぞれ、様々あるが、透き通った黄緑の美しさといったら、キリギリスの羽根よりも上だろう。
大きな幼虫は大きな蛾となり、またその姿も良いものだ。
翻って、鳥など、捕食者側の目線で見ても、この大きさは満漢全席、これほどのごちそうなど他にはあるまいと思わされる。
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