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【随筆/まくらのそうし】 カメムシ

 ナス科につくのはカメムシで、葉裏にびっしりついた小さなものなど、恐怖症なら卒倒しかねないというものだ。

 中でも、ピーマンを育てるに、カメムシを避けては通れず、自然農法などと言おうものなら、産み付けられた卵を見つけ、焼却するしかないのである。

 しかし、それがびっしり孵化したものを、パンッと挟んで、祈るように擦り合わせる人を見た。

 普通は薬を使うところを、自然にという人であり、それはそれで構わぬが、こちらにやれと言うもので、どうも辟易してしまう。

 臭いカメムシ、言われるままにパンッとすれば、悪臭を通り越えてブルーベリーのガムの香り、聞けば、いくら自然派というなれど、そうする人は他にいない、と。

 ならばやらねばよかったと、そう思っても後の祭り、手のひらで滓となったカメムシを思い、なんとも嫌な気分が残る。

 ちなみに、このカメムシの卵というのは金色で、等間隔に産み付けられた、とても美しいものである。

 葉裏にそれを見つければ、焼いてしまうのも躊躇われる。

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