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コガネグモの一生

 コガネグモというのはその名の通り、黒に黄色の眩しいクモである。

 軒に大きな巣を構え、その中心にバッテン形に止まっているのが通常で、虫が掛かれば、暴れる動きを検知し走り寄り、ぐるぐる巻きのミイラにしては、そのまま吸ったり、備蓄用に取っておき、後でゆっくり食事をするのが見て取れる。

 美しく大きいのがメスであり、よく見かけるのもメスばかり、オスはどこにいるものか、小さくボロいものならば、あまり目も惹かぬ。

 メスはまったく勤勉で、毎朝、新しい巣を張って、獲物を捕らえ、食べているが、残暑の辺りに繭のような卵を産むと、そこからだんだん老いぼれていく。

 あれほど毎日張った巣も、一日おき、二日おきと、綻びが目立つものになり、卵を三つ四つ産む頃にはもう、巣もぼろぼろなら、メスもぼろぼろ、糸に止まっていることすら、やっとという風情である。

 そして、粘りに粘った秋の朝、ぽとりと地面へ落ちて死ぬ。後に残された卵はじっと、寒さに耐えて春を待つ。

 春になれば卵から、わらわら子供が生まれ出で、同じように生きて死ぬ。

 外から見れば、人の生き様も同じよう、主観で違っているようで、その実、変わらぬものではないかと、可笑しく思えるようである。

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