マガジンのカバー画像

一四零の庭苑 1巻 完結

1,000
X(旧Twitter)で毎日書いている140文字以内の短い詩たちです。 全1000話の第1巻となります。 マガジンのタイトルの意味は、X(旧Twitter)で140文字内で書いて…
運営しているクリエイター

2022年6月の記事一覧

詩「熱帯夜」

焼けるような暑さ 頭の芯からクラクラする しかしながら夏がニヒルに決める その虚無的な誘いには逆らえない 焼ける夕陽の朱 夜の闇、月明かりで過ごす 屋上に立つ コンクリートが未だ昼の暑さを抱え 足下から煽るように熱風を寄越す 月に酔い痴れた頃 風が悪戯に冷たくあたり去る 熱帯夜

詩「たそかれ」

黄昏 赤く燃える日の終わり 雲たちの気遣いにて目にした陽の光 陽の光の神秘の感覚 己の身に余ると胸を打つ 赤が闇に飲まれる刹那 呼吸も丁寧に 瞬きは惜しく目を見開いて 肢体は微動だにせず 一時 瞬く間に目の前の空は闇 誰そ彼は 闇に問う 世界は一変し 私は己の鼓動に時間を合わせた

詩「息をする」

詩の中で息をする 文章の中で吸っては吐くを繰り返す 言葉たちは泳ぐ 空中を泳ぐ言葉たち 私の呼吸で私の中を泳ぐ言葉たち 息をする 吸っては吐くを繰り返す 命の初めの呼吸 文章は呼吸をして詩となる 誰かが詩の呼吸に合わせる 共鳴する鼓動の高鳴り 詩は息をする 人は詩で息をする

詩「揺らめいて」

ゆらりゆらりと雲間に月明かり ゆらりゆらりとグラスを傾け 私は揺れるグラスの中を見詰める 思考が揺らめいて 無限の時でもあるかのように委ね酔う 静寂 思考 空気 音なき音 伝わる振動 言葉は言霊へ 己に染み渡る言葉たち 私の中は言葉の海 言葉の波間に漂う煌めき フィナーレ

詩「甘い思考」

時に委ねる極上の思考 甘い思考 脳には毒 感情には媚薬 体には揺らぎをもたらして 私の高揚は突き抜ける 瞳に映るもの 耳に届く音 それらも甘い思考の前にはお手上げで 全てが甘く蕩けて為す術なく 時間だけがニヤリと笑う それは甘い思考の天敵 終わりを告げに来る使い 暫し蜜に酔う

詩「君の黄昏」

君は太陽を信じきり 聖なる光と手を差し出す 君は月に恋い焦がれ 月の光に身を任す 内なる自分は汚れていると 何も無いところから罪を作り 果ての無いその思考で闇に身を落とす 時が経てば太陽が上がり 時が回れば月が上がり 君はよじれるような身を持て余し 唯々時に身を隠す 君の黄昏

詩「叫べ」

君よ叫べ 己の思考を吹き飛ばすがごとく 喰らった言葉を叫べ 胸の内で震える、それを叫べ 腹の中で生まれた、それを叫べ 恐れるものはない 体を張れ 鋼の鼓動を持て 体の内から溢れる力 叫ぶは己 叫ぶは本能だか理性だ 自らも震え 空にも地にも見せてやれ 全てを震撼させろ 叫ぶは命の炎

詩「くじけた心」

挫けてしまった 心が折れる音が聞こえる 自然と膝が折れ、体に力が入らない 下を向けば、頭に血が行き叫びそうだ 叫んだついでに大声で泣きそうだ それが嫌ならと 上を向けば、視線は天井を見て彷徨う 「どうすれば……」と 言葉が口を突いて出た 途切れる声 言葉を出し切り口を噤んだ

詩「行こうか人生の道」

共に行こうか人生の道 前を見れば先人も歩く 共に行こうか人生の道 おや、君はここで分岐点かい ならば、私はどうしようか そうだな、暫し立ち止まるが どうやら共に行けそうだ 共に行こうか人生の道 先人あり分岐点あり 後ろを見れば連れもあり 行こう人生の道 今日は晴天だ

詩「回廊」

私の思考の回廊を行く 思考の回廊を行く時は私の体はどこか器の様 ひとつの言葉を廊下で拾う その言葉を持ってまた彷徨い行く回廊 心地良く思考が回る 気ままに言葉は置く また身軽になって回廊を只回る 時も忘れ回るときは乗っている時 思い掛けないものに行き着く 思考の回廊を行く 只至福

詩「私たちの心」

目に見えぬもの 手に取れぬもの それでもあるだろう心というもの 時に私は君の心を見たくなり 君は私の心を知りたくなり 私たちは心もどかしく けれども言葉を交わせば 互いの手を取れば 抱きしめれば温かい心 そして一度離れれば振り出しに戻る 厄介なものを私たちは持っている

詩「泣くことと我慢」

我慢して我慢して 大人になると当たり前になった泣くことの我慢 我慢して我慢して 子供の頃とは違う泣くということの我慢 そんな我慢をどこで大人たちは覚えてきたのだろう 見栄もなくていい プライドもなくていい 時にそれらをかなぐり捨てて 泣く 人はそれでいいと思うんだ

詩「お伽話を夢見る頃に」

少女だった頃 お姫様を夢見て お城を夢見て 王子様を夢見た 目に映るものは全てが輝き 語り掛けてくる音は全てが刺激的で 世界は見えぬ愛に溢れていると感じた そして少女は大人になった ふと思い出した少女の頃 今は懐かしくあの頃に憧れた 心には何もなく 見えぬ愛が欲しい

詩「生まれて死ぬ」

君は泣いた 力の限りを尽くし大声で産声を上げた 君へ 「ありがとう」 生まれて来た君に皆は笑顔を贈る 今から君は喜びと苦しみの中、人生を行くんだね 長い人生だったかい 最後の時、君は力の限りを尽くし笑った 皆は泣き顔だ けれども君 泣いて生まれて笑って死ぬ いい人生だ