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医療分野はデータコンテンツの宝島

こうした記事は最近よく見かけます。

まずは、この記事の冒頭部分。

米国のスタートアップ投資で脚光を浴び始めているのが医療分野だ。バイオ関連から保険、遠隔医療と幅が広い。医療の先端技術を巡って急速にIT(情報技術)化が進んでいることが背景にある。「医」に流れる巨額のマネーの出どころを探れば、IT業界でおなじみの面々が現れる。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムのいわゆる「GAFA」を筆頭とするテックジャイアントたちだ。投資を通じてスマートフォン(スマホ)の次を担う事業の種を探る布石を着々と打っているのだ。

この動きについては、将来的に儲かると踏んでいるからとはいえ、
なぜにITの巨人たちが医療分野に巨額の投資をしているかといえば、
やはり医療分野から得られる

患者(個人)と紐づく医療データに最大の魅力

があるからだと思っています。やっとAIは万能で近いうちに人類の仕事を奪う恐ろしいものだっていうヒステリーも収まりつつある昨今、
コンピュータを使った学習に利用する

データの質も大切

だとの認識が広まってきている、と私は感じています。

つまり、集めているデータってちゃんとしているのか?ってことです。

ただ生データを集めただけではダメで、
整理整頓されている必要があります。

情報業界といいますか、
データの世界では有名なDIKWモデルという考え方があります。
*お時間があれば、以下の投稿読んでください(簡単に解説しています)

さて、この図を見ていただくと、
データというのはその活用において段階があるのがわかります。

生データ→→情報→→知識→→知恵という段階を踏んで、
価値が高まっていきます。
なので、集めているデータを少なくとも情報レベルまで引き上げないと、
ノイズの多いデータを利用することとなり、結果にばらつきが出ます。
そして、医療業界から得られるデータというのは、
その後の営業活動やマーケティング活動にも利用したいため、
きちんと設計された形でのデータ取得が行われている場合が多いです。

そうであれば、
ITの巨人たちからすると素敵なデータコンテンツと映るはずで、
そこに自社の解析技術やその他のデータソースとの連携が加われば
鬼に金棒という未来が描きやすくなります。
いくら腕のいい料理人でも、腐った食材しか手に入らなければ、
良い料理が作れないのと一緒です。

私は情報業界に身を置いているので、
匿名化された個人に紐づいた医療データの有用性の凄さは
肌感覚としてあります。
すでに、これまでに蓄積された科学的なデータ間の関連性を解析することにより、特許切れの医薬品を他の疾患で活用する

ドラッグリポジショニング

などは、もうよくある話になっています。
ここでの科学的なデータを簡単に言うと、

遺伝子レベル/細胞レベル/生体レベルの反応の因果関係に関するデータ群

です。

具体的には、医薬品の作用機序、細胞内での分子間相互作用やパスウェイ情報、代謝や毒性、遺伝子発現、遺伝子変異、バイオマーカー、関連する疾患や症状、身体反応などと言ったデータを含みます。しかも、こうした様々なレベルの情報が高度な専門性を持った人たちによってキュレーションされ、DIKWモデルにおける「K」の知識レベルにまで分析・体系化されたデータを使うのが多いパターンです。

その網の目のように関連付けされた一群のデータ網をソースとして用い、
関連性を計算する最適なアルゴリズムを使い計算し、
対象疾患の予測

標的分子となりうる可能性のある分子の予測
に加えて、
併用医薬品の選定

患者の層別化
と言ったことにも利用できますし、
実際に創薬研究から臨床開発における現場においてもこうした
システムバイオロジー
という手法が取り入れられています。

こうしたメカニズムに関連するデータの蓄積はかなり進んでいる現状に、さらに患者情報と紐づいた医療データが加わることは、マスを対象としてたこれまでの医療が個人レベルに合わせた対応へとさらに進むことを意味するだけでなく、医学基礎研究への良質なフィードバック効果とさらなるライフサイエンス分野の発展、治療効果の確実性のさらなる向上、病気発症の予測能の進化、個人の健康管理、診療現場での利活用、医療倫理の議論の活発化など、かなり幅広く深い影響があると想像しています。

そうした影響が生まれつつある現在から未来において、パワフルな計算能力、最適な計算アルゴリズム、そして膨大な網の目のような医療関連データ群を保有している機関は、医療分野において相当なパワーを持つことになるのは想像に難くありません。そんな未来が確実にやってくるだろうな〜って思うと、こうしたITの巨人布石はかなり良い投資なのだなと思わざるを得ませんし、まさに自分たちの土俵での戦いになるので、さらに投資への意欲も湧くというものだと思います。

少し毛色違う話題ですと、
2018年10月4日にGenomics EnglandがIQVIAとの提携を発表しています。

治療開発を促進するプラットフォームを開発するための共同研究が開始されます。しかも、臨床データと非特定化されたゲノムデータを関連づける形です。ITの巨人たちの話とはちょっと毛色は違いますが、データコンテンツホルダーたちの間の提携は、データの質を向上させる上で大切な流れです。

こうしたアライアンスについては今後ウォッチしたいなと思っていますが、ITの巨人たちはしっかりと見ているのなかぁと思えてなりません。。。これからこうした分野での企業間アライアンスは面白そうですし、規制当局の動きやアカデミアでの研究も気になります。

わたしにとっては、色々と注目していたい分野です!

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