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サンフレッチェ広島は本当に強いのか。

Jリーグは第7節を終え、早いもので全体の5分の1を消化。

シーズン前の下馬評も低く、開幕から数試合の完成度を見た時に、サンフレッチェ広島が首位に立つなんて想像できたか……。

しかし!多くのサポーターの脳裏によぎるのはきっと昨年の大失速。圧倒的だった前半戦と、まるで勝つことができなくなった後半戦。「今年も同じ展開になるのでは……」と思うのも無理はない。というか怖い。

さてさて、果たしてサンフレは本当に強くなっているのか。明日に控える序盤の大一番FC東京戦はどうなるのか。現時点のサンフレの強みを見つつ、検証してみよう。

まず、多くのニュースサイトで言われるのは「堅守広島」。実際に7試合で3失点。クリーンシート5試合と数字にも表れている。

今年の守備の基本は「森保時代のドン引きリトリート」と「ヨンセン・城福時代のハイプレス」の組み合わせ

リトリートはサポーターには見慣れたもので5-4-1でゴール前に人数を固めるもの。相手からすると中央はパスコースが無く崩せない、サイドでボールを動かしても守備側の人数が余るのでマークがズレにくい。シュートを打ったとしてもDF陣が最後まで体を張りシュートコースを限定してしまう。

ハイプレスに関しては、ワントップ、シャドーがパスコースを限定しながらサイドやゴールキーパーまで追いこんでいく。無理な体勢でボールを受けた選手に対してはボランチ、シャドーが連携し、ボールを取りきる。プレスからロングボールで逃げようとしても簡単には蹴らせないためセカンドボールが拾いやすくなる。

一定のラインまではハイプレスをしかけ、相手がハイプレスをかいくぐった瞬間に全員が素早く自陣に戻りリトリート。これが基本の形。

当然前線・中盤の選手には「前からプレスをかける」「守備のフォローに入る」というタスクが与えられるため、とにかく運動量とフォローに対する高い意識が必要になる。

何度も前から守備のスイッチを入れる野津田。ポジショニングと流れを読むことに長けた柴崎。2人のシャドーは明らかに守備を意識したスタメン起用。毎試合走行距離トップに名前を連ねる川辺、松本の両ボランチがこの守備の切り替え、サイド・シャドーのフォローに慣れてきたことで守備の安定感はぐっと増したように思える。

守備が機能した試合が大分トリニータとガンバ大阪の2試合

大分は相手のプレスを引きつけておいてスペースに流れ込む高速カウンターが武器。ならばそのスペースを最初から潰してしまえとリトリートを徹底。相手の良さを消した上で、あとは選手の個人レベルで上回るサイドを時間をかけて攻略していった。ガンバは攻撃の構築が上手くいっていないのか、ボールを持ってもフォローの動きが少ない。そうなるとハイプレスも簡単にはまってしまう。今野不在の影響が大きいのか中盤でのボール奪取が機能せず、相手のカウンターになりそうなボールのほとんどを川辺が潰す。相手にボールを持たれつつも、試合の主導権は常に支配し完勝した。

逆に守備が機能しなかったのが前節ヴィッセル神戸戦

守備が得意ではないパトリックがワントップだったこともあり、ハイプレスがはまらない。また、ACLの連戦の疲れもあるのかディフェンスラインの押し上げが弱く、ハイプレスをかけているのにディフェンスラインは低い状態に。この状況で相手に簡単にロングボールを蹴らせてしまう。空中戦にめっぽう強いウェリントンが起点になりスペースがぽっかり空いた中盤をイニエスタを中心に自由に使われてしまった。後半、相手の運動量が下がった後のディフェンスがだいぶお粗末だったのもあり逆転できたが、後半にもいくつかあったヴィッセルの決定機がひとつでも決まっていたら試合の結果はわからなかった。

続いて、攻撃に関して。

ここ2試合で7得点とまさにケチャドバ状態だが、実際はまだまだ発展途上といった印象。ガンバと神戸のように後半中盤の運動量で勝てるチームにからは点を取れているものの、個人技、もしくは切り替えの早い展開の中での個人のコンビネーションがほとんどでチーム全体として意図して崩せたシーンはまだまだ少ない。

基本の攻撃の形は左サイドが中心。柏、野津田、川辺、佐々木の4人が狭いスペースでボールを出し入れ、相手のサイドバックを引き出し、相手のチャンネル(サイドバックとセンターバックの間)を広げて柏、ワントップが裏抜けを狙っていく攻撃がメインになっている。もう少し中央から崩す形が出てくるとサイド攻撃にも幅や余裕が出てくる。柴崎の代わりに出場機会を得た渡は自分がボールを持った時に仕掛けられる。野津田にも強力な左足があり、シャドーのシュート意識が上がればバランスよく攻撃はできそうな気配はある。また、右サイドのサロモンソンが常に高い位置へと全力疾走を繰り返しているが現状あまり使われないのは少しもったいない。シンプルにボールを送り速いクロスでワントップへ送る形も増やしていきたいところ。

松本、大分、ガンバ、神戸の試合を見るに相手の弱点になりそうな部分はきっちりとスカウティングされているように思える。サイドバックの守備に難があるパターンが多く、広島のストロングポイントを存分に発揮できた。しかし、ディフェンスに自信のあるチームや、下位に沈むチームが守備を固めてきた時に崩しきることができるかどうか。相手の守備の弱点に合わせる多彩な攻撃はこれからの課題と成長ポイントだろう。

さて、長くなった…。

結論からすると結果のわりに内容はまだまだ発展途中…といったところが正直な感想。守備に関しては運動量とハードワークが大前提の仕組みになっているので、連戦の疲労・夏の気温の影響をもろに受けてしまう。またロングボール、ハイプレスで空いたスペースに対しての解決策はまだ未整備の印象。攻撃に関しては個人個人で覚醒の気配はありつつも、どこまでチームの連携を深めていけるか次第。けが人も復帰してくる中で選手の組み合わせにも頭を悩ませるところ。首位にいるからって慢心、ダメ、ゼッタイ。昨年の経験からメンタル面で気が緩むことはなさそう。あとは控え組が急成長していることで選手層が厚くなり、選手を入れ替えながらハードワークと運動量をどこまで維持できるか。今の戦い方では走れなくなった途端に守れない・攻めれない状態になる

次節のFC東京戦…今までの戦いを見るにおそらく一番苦戦が予想されるチームだろう。選手の質も高く、集中力も高いコンパクトな4-4-2でゴール前を圧縮するとボールを入れるスペースはほぼない。全員が献身的に動き、フォローをさぼらない。ボールを奪えば久保、永井、ディエゴオリヴェイラの3人だけで速攻のカウンターを完成させてしまう。要は似た者同士の対決。フォーメーションは違うにしても運動量と献身性をベースにした守備がストロングポイント。カウンターからの攻撃が整備されている分、FC東京有利とも言える。

カギになるのは東京の右サイドバック・室屋と柏のマッチアップでどちらが優位に立てるか。また中盤の選手の運動量でどれだけ上回ることができるか。どちらにしても前半はお互いに固い試合になりそうな気配。後半の交代カードの使い方にも左右されそう。集中力を切らした方が負ける。ジリジリとしたしびれる試合展開になりそうだ。

楽しみですね!やっぱり上位でしびれる試合が一番楽しい!


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