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新生サンフレッチェはこの成長痛を乗り切れるか

Jリーグが開幕してから2節が経過。サンフレッチェ広島はACLも含めると公式戦4試合を消化した。

今シーズンの広島は見慣れた3-6-1フォーメーションに変更し、ボールを握るサッカーを目指しキャンプなどに取り組んできた。しかし、開幕を前に怪我人が続出。チームの大黒柱 青山、守備の心臓でもあった稲垣の両ボランチ、不動の守護神ゴールキーパー 林とチームの屋台骨を欠いた状態となってしまった。

城福監督は「昨年の2位を超え優勝争いを」と意気込んだ就任2年目のシーズンだったが、苦しいチーム事情もあり積極的な(半ば強制的な)若手起用にシフトせざるをえない。

公式戦出場のなかった19歳GK大迫、期待の若手20歳の松本泰志を先発に抜粋すると、高卒ルーキーの東、松本大弥は交代要因として毎試合出場している。

肝心の試合内容は、現状のベストとはいえ苦しい…と思わざるを得ない内容が続いている。1節の清水戦では新加入のサロモンソンのスーパーボレーで得点を挙げたものの、それ以外の攻撃の迫力に大きく欠け、続く第2節磐田戦、ACL1戦目と無得点。

そもそも3-6-1は前線3人のコンビネーションによる中央突破、早いタイミングでのサイド攻撃が中心になる。そのスイッチを入れる要素が欠けていることが大きい。前線3人の組み合わせは未だ模索中で連携は発展途上。攻撃のスタートとなるパス出し役の松本も健闘はしているが、やはり青山とは経験値の差が出てしまう。パスのスピードに変化がなく、スペースを空ける動き、3人目の流動性も少ない。攻撃に時間がかかってしまうため、しっかりと待ち構えた相手に苦しい体勢からクロスを上げるのが精一杯なのが現状だ。

このフォーメーションを生み出したペトロビッチ監督が率いるコンサドーレ札幌と比較してみるととにかく攻撃のテンポが異なる。ボランチやCBからの早いパスをシャドーがマークを引きずり出しながらシンプルにはたく。空いたスペースに人が流れ込むことで相手ディフェンスにカオスを生む。城福監督の目指す「ムービングフットボール」を体現できているのはむしろ今は札幌と言える。

とはいえ、この3-6-1フォーメーションをこのチームで構築するのは今シーズンが初といってもいい。現状はこの複雑なフォーメーションを今のメンバーの中でいかに精度を高めていけるかにかかっている。

シーズン中盤に、実戦経験を積んだ若手と怪我から復帰したベテラン組が融合することでどこまで昇華できるか。それまでは勝ち点をなんとか拾いながら耐えるしかない。

懸念があるとすれば、降格圏争いの中でこの方針をやめてしまうことである。ここで目先の成績に振り回されると、チーム規模から考えてもその場しのぎの残留争いチームに定着してしまう。これは成長のために必要な痛み。優勝を経験したメンバーの大半がいなくなり新しい広島に生まれ変わるために必要な成長痛だ。

勝てない試合は選手にとっても、サポーターにとっても苦しい。去年の9月1日の鹿島戦から勝利を挙げることができていない。だからこそ今のメンバーで勝つことが何よりの薬になる。単純な話だが「今でも勝てる」「怪我の主力組がいなくても大丈夫」といった自信と勝ち癖を今のメンバーが獲得できた時には、新生サンフレッチェの目指す姿が明らかになってくるのではないだろうか。

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